宅配バイクが街中に

街中の飲食店がデリバリーに雪崩を打った。日本ではウーバーイーツが急成長しているが、タイでは、そのウーバーを飲み込んだ東南アジアのユニコーン「グラブ」、4000万人以上が利用するLINEの宅配サービス「LINE MAN(ラインマン)」などのバイクが飲食店の料理を乗せて、渋滞が減ったバンコクの通りを走り回る。

配車アプリ大手「グラブ」などのバイクが市内を走り回る。

それでも新規感染者が1日100人ペースで増え続けると、26日に非常事態宣言が発動された。外出禁止や、工場閉鎖などは導入されなかったものの、この時点で社会の空気が一変していた。グーグルがスマホの位置情報を分析したデータによれば、公共交通機関の駅の利用は、感染拡大前と比べて約4割減少していた。

鉄道でのマスク着用や2メートル以上のソーシャル・ディスタンスは25日に義務化された。車両の座席には、1席ごとに大きくバツのシールが貼られて、隣り合わせに座れないようになる。4月に入り、セブン‐イレブンでも入り口で検温を開始した。

バンコク市内の「セブン-イレブン」。来店客は入り口で検温を求められる。

「コロナ離散家族」に

非常事態宣言により、外国人の入国が原則禁止された。筆者の妻はベトナム人で、ホーチミン市に住む。ベトナムはタイに先駆け、外国人の入国をほぼ全面的に禁止しており、往来は今や不可能だ。バンコク~ホーチミン市を結ぶフライトの飛行時間は1時間半で、LCCを使えば片道5000円ほど。週末を使って気軽に帰っていた妻子との間に、コロナの壁がそびえ立った。タイもベトナムも自国民であれば受け入れるが、在住者の配偶者まで受け入れる余裕は残されていない。単身赴任は離散家族になった。

酒類の販売禁止も

孤独をひとり酒で紛らわす日が続いていた4月9日、バンコクは酒類販売を20日まで停止させると発表した。またもや「明日から」。夕方に一報を受け、スーパーに走った。案の定、売り場に人混みができていたが、群がっているのは外国人ばかり。後でタイ人に聞くと「禁止になるのは前日から知っていた」。情報不足で3密づくりに加担してしまうことになった。

酒類販売禁止の狙いは、13日に始まる暦の上でのタイ正月期間に、人が集まる宴会を防ぐこと。だが店内飲食は既に禁止され、3日からは午後10時~翌午前4時の夜間外出禁止令も敷かれている。禁固刑もあり得る罰則付きだ。ダメ押しで出された禁酒令には、さすがに批判も上がったが、バンコク当局は最終日の20日、禁止期間の10日延長を決めた。