地元の住民「連休中は近くに出かけてみよう」

2つ目の死角は、地方では外からやってくる旅行客以上に多くの地元の住民が観光地や名勝に出かけるという事実です。

グーグルのリポートによると、コロナショック以後、東京では繁華街や娯楽に関する外出は53%も減っています。一方で、鹿児島県は16%減、山口県は23%減といった状況で、地方はおおむね2割前後しか人の動きが減っていません。

47都道府県で唯一感染者がゼロ(4月22日時点)の岩手県は同じ指標で外出は12%減と、1割程度しか抑制されていません。その状況で地方都市が5連休を迎えることになります。さらに悪いことに、気象庁の予報を見ると今年のGWの後半は天気がよさそうです。

ここまでの外出自粛やテレワークで気持ちがふさいでいるため、地元の住民は「じゃあ連休中は近くに出かけてみようか」となりそうです。実際、東京でも主立った公園の人手は自粛前よりも増加していました。地方でも繁華街は閉まっているので、外出の目的地は観光地になり、そこで大都市圏からの旅行客と行動がかち合ってしまうことが危惧されるのです。

たとえば一昨年の北海道の観光客数は訪日外国人が312万人、東京や大阪など道外から607万人であるのに対して、道内からは4601万人と圧倒的に地元の観光客のほうが多いことで知られています。

そうして人気の観光地で地元観光客の「密」が発生しているところに、首都圏や関西圏から無症状の感染者が旅行者や帰省客としてやってきて同じ場に居合わせることになる。これまで相対的に感染者が少なかった地方の都道府県でこの悪いシナリオが重なった場合、地方での感染拡大は5月2日から6日までの5連休に起きることになります。

6月3日まで緊急事態宣言は解除できない理由

そして3つ目の死角はその感染から発症までのタイムラグです。

私は政府の緊急事態宣言は5月6日には解除できないと見ています。ロックダウンが先行しているニューヨーク市でも具体的に感染者数が目に見えて減るようになってから2週間、パリでは3週間は様子を見ると言っています。日本の場合も5月6日に「あと2週間様子を見てみたい」と政府が判断するのではないでしょうか。

ではその2週間後の5月20日ごろはどうなっているか。厚労省によると新型コロナウイルスは感染から発症までの潜伏期間は1日から12.5日とされています。つまり、GW後半に感染した人の発症タイミングと、政府が緊急事態宣言解除を検討する次のタイミングが一致してしまうのです。そうなるとさらに2週間、6月3日まで緊急事態宣言は解除できない状況が続くことになります。

このようにGWには感染拡大のリスクが横たわっています。そのことを考えると、日本型の新型コロナ感染対策に決定的に欠けている視点は「強制力のなさ」だと言えそうです。

学校の休校、企業のテレワーク、国民全体への外出自粛要請などは2月後半からずっと続けてはいます。しかし、感染拡大のピークが少しずつ後ろにずれているだけで、感染自体は止まっていません。社会全体への強制力が足らないことから効果は限定的です。