「福岡市などが創設した『福岡ヘルス・ラボ』で、福岡歯科大学を含む産学官連携で18年に実証実験を行いました。実証実験の結果、歯周病かどうかの客観的正答率は67.2%。まだ決して高い精度とは言えませんが、低くもないと考えています。AIは歯の色も解析していますが、撮影環境で歯や歯茎の色が影響を受けることもあります。そういった課題を1つずつ解決していけば、より高い精度になっていきます」(小山代表)
歯周病かどうかの診察は、いずれにせよ歯科に行く必要がある。しかし、歯周病は自覚症状がなかなか表れず、気づきにくい。
「開発中のアプリは、福岡市や神戸市の市民向け健康イベント、広島県福山市の特定健診などで実証実験を行っています。最近はドラッグストアにもご協力をいただいています。歯の写真を撮るだけで歯周病リスクの大・中・小がわかります。リスクがあるとわかったら、歯科医に行こう、歯みがきをしっかりしようといった行動に結びつく。それで、皆さんの歯の健康に役立ちたいと考えています」(同)
【IoT歯ブラシ】口臭チェックが毎日できる
人と会うときに「口が臭い」と思われたくはないだろう。そこで、口臭を検知するセンサーを搭載させた電動歯ブラシを開発中というデンタルテック企業が大阪府にある。NOVENINE(ノーブナイン)代表取締役社長の廣瀬智一さんは、次のように語る。
「世界初の口臭センサー付き電動歯ブラシ“SMASH”(スマッシュ)の開発を進めています。口臭には様々な原因がありますが、SMASHで検知できるのは歯周病菌が産出するガス。そのため、口臭があるかをチェックできるうえに歯周病リスクも知ることができます。歯ブラシ本体の表示機能で簡単な計測結果がわかるほか、スマートフォンのアプリでは歯周病リスク度の推移などの詳細を見ることができます」
計測したデータはインターネットを通じて解析を行って、アプリに自動的に保存される。「SMASH」は、あらゆるものがインターネットでつながる「IoT」(Internet of Things:モノのインターネット)機器なのだ。
ただ、なぜ歯ブラシにセンサーを搭載させるのか。単なる口臭チェック機器にしなかった理由について、自身が歯科医師免許を持つ代表取締役歯科医師の竹山旭さんは次のように説明する。
「歯の健康を維持するためには、“習慣化”が大切です。歯ブラシにセンサーを搭載する理由は、毎日習慣となっている歯みがきの際に口臭チェックも習慣にすることはハードルが低いからです。口臭チェックだけでは、新しい習慣を始めなければならないので三日坊主になりがち。しかし、すでに習慣化されている行動の中で習慣を少し変える分には継続がしやすくなるのです」