【救急現場への質問1】前年と比較した救急患者数の増減について
最近、あなたの周囲では救急車のサイレンを聞く機会が以前より少なくなっていないだろうか。
私の自宅近くには24時間体制の二次救急病院(地域の中核病院)があるため、以前はひっきりなしに救急車が出入りする音が聞こえたが、ここしばらくは静かな状況が続いている。
実際に、前年同時期と比較して1~2割、救急患者が減少している傾向にあるという。例えば大阪府の救急車の出動件数だが、2018年3月が4万2449件、2019年3月が4万4519件、そして今年が速報値ではあるが約3万8500件となっており、前年と比較しておよそ6000件減少している。
一つには自粛により「不慮の事故が減少したからではないか」と、堺市立総合医療センター救命救急センター長の中田康城医師から指摘された。
「救急患者は通常より減少」している
確かに救急医療に密着取材していると、この不慮の事故がとても多いことがわかる。金曜日の夜であれば酔っぱらいの転倒事故や、急性アルコール中毒、雨の日の夜ならバイク事故、晴れの休日なら登山などお出かけに伴うケガが頻発する。
また日本一救急患者を受け入れている湘南鎌倉総合病院救命救急センター長の山上浩医師も、「特に夜間は少ない。ウォークイン(患者が自ら歩いて病院を受診すること)でケガなどが受診理由の患者は目に見えて減っている」と話す。
さらに中田医師は「不要不急の救急患者も減ったこと」の可能性も理由に挙げる。命に関わるような人以外は、救急医療を緊急で受診するのを控えようと考える人が増えたのかもしれない。
いずれにしても現在、「救急患者は通常より減少」している。
【救急現場への質問2】今後、救急患者の受け入れが難しくなるか
それなら救急医療はいつもよりスムーズに行われているのか? というと、もちろん違う。特に東京都内では救急搬送を受け入れない病院が増えている。
上記のようなニュースが流れ、厚生労働省は今月18日付で、救急隊からの受け入れ要請を病院が断らないように求める通知を、都道府県などに出した。
倉敷中央病院救命救急センター主任部長の池上徹則医師は「しかし今後(救急患者の受け入れは)難しくなる」と予想する。
「当地でも“発熱を訴える”患者さんは、二次救急病院で受け入れ難くなっている。加えて、もともと新型コロナウイルスの患者さんを受けている三次救急(救命救急センター)ではそれだけでも逼迫していますので、新たな患者の受け入れが困難になる」