マインド

「相手のために、役に立ちたい。」このマインドは、コンサルタントの仕事の原動力となります。当連載で何度も繰り返していますが、「クライアントのために」力を発揮するのが、コンサルタントの役割です。「クライアントのために」という価値基準を持てない人は、そもそもコンサルタントに向いていません。私はといえば、幼いころ他人を助けて、「ありがとう、すごいね」と先生からほめられたことが、コンサルタントという道を選ぶ原体験となっていると思っています。

一方で、「自分はこう思う」「自分はこうする」という自立した精神も必要です。相手に言われたことをそのまま鵜呑みにしていては、コンサルタント失格です。何に対しても「本当にそうなのか」を問い、自分なりの考えを持ち、それを相手に伝えられる能力が求められます。

クライアントから言われることと、自分の考えとが違うことはよくあります。例えば、クライアントの経営者は、積極的に事業拡大したいと言っている。でも、事業環境は厳しく、拡大がうまくいく可能性は低いと自分では思っている。このように対立したときは、どうすればよいでしょう?

クライアントのために自分の考えを押し殺して、クライアントの言うとおりに進めるという道もあります。確かに一般論として、クライアントが実現したいことを手助けするのは重要なことです。でも何でもかんでもクライアントに従うだけだと、単なる「お調子者」でしかありません。

本当にうまくいかないと思うのであれば、別の道を示す方が、真に「クライアントのために」なるかもしれません。でも極端に自分の意見に固執するのは、単なる「頑固者」です。クライアントから疎遠にされ、意見を無視される存在になってしまうかもしれません。また、あまりに融通の利かない態度では、コンサルティング契約が打ち切られてしまうかもしれません。

結局、主張は適度に行い、クライアントのとれるリスクを考慮の上で、納得感のある合意形成に導くという、柔軟なバランス感覚が必要なのです。

こういうマインドは、必ずしも先天的なものでは無いと思います。「クライアントのために」という利他の精神と、自立の精神と、そして、柔軟なバランスを意識して日々の仕事に臨むことで、選ばれるプロフェッショナルに必要なマインドも培われていくのです。