ハイパーインフレで日本円は紙切れになる

反発を承知して言うが、私は「日銀は倒産せざるを得ない」と思っている。もちろん中央銀行は社会に不可欠な存在だから、新しい中央銀行は創設される。しかし現に流通している円は単なる紙切れになる。円は現在の中央銀行である日銀の負債だからだ。

しかし、中央銀行といえども、つぶれた歴史がある。終戦後のドイツだ。当時の中央銀行(ライヒスバンク)は、第2次大戦で軍事費を調達したいヒットラーの圧力に屈し、異次元緩和を行った。その結果、終戦後にハイパーインフレを引き起こし、後始末のためにつぶされた。

その後新しい中央銀行(ブンデスバンク)を創設され、ハイパーインフレを鎮静化した。ハイパーインフレとは貨幣価値が失墜したことにより起こるものだから、貨幣価値を正常化すれば収まるのだ。

一番ひどい目にあったのは、最後まで旧紙幣を保有していた庶民だ。手元に残った紙幣は法定通貨ではなくなる紙くず化してしまったからだ。紙くずでは何も買えない。

「円の価値を担保するのは、物価上昇率と経常収支と外貨準備と対外純資産だ」などという人がいるが、違う。円の価値は日銀への信認が失墜すれば簡単に崩れ去る。

終戦後のドイツにおいて、経済実態が何も変わらないのに、健全な中央銀行(ブンデスバンク)を創設することにより貨幣価値が回復し、ハイパーインフレが鎮静化したことからもご理解いただけるかと思う。

かつては優良経営を続けていた日銀

私が金融マンだった頃(2000年3月まで)の日銀は、「山のように何があっても動じないよう、日本経済の最後の砦となるよう」と自戒していた。

1992年10月発行の「日本銀行の機能と業務」という日本銀行金融研究所が発行した本がある。その本には「銀行券は日本銀行にとって負債(いわば、日本銀行の発行する債務証書)であり、日銀はそうした負債に見合う資産として、発行券発行額以上の発行担保物件を保有しなければならないことになっている。なお、これらの発行物件については、中央銀行の資産としての健全性に関して充分な注意が払われている」と書いてある。

元日銀マン氏に聞くと,入行時の研修でも、そう習ったそうだ。

実際、当時の日銀のバランスシート(1993年末)を見ると、規模は50.2兆円。現在の585兆円(2020年2月末)の12分の1だ。負債の大きな部分の41.6兆円は発行銀行券。資産は買入れ手形8.5兆円、国債31.4兆円で、負債に見合う資産をしっかり保有している。