「中国寄りの姿勢が顕著に表れたのは台湾の排除問題である」

そう思って産経社説を読み進めると、案の定である。

まず「中国寄りの姿勢が顕著に表れたのは台湾の排除問題である」と書き出し、こう主張する。

「テドロス氏と中国が一体であることを如実に示した事例だ。国際社会が結束して感染症と戦う先頭に立つべき機関のトップが、一国の政治的思惑に左右されるようでは、到底、信頼を置けない」

もちろん中国とテドロス氏の言動には沙鴎一歩も不信感を抱く。しかしそれ以上にあまりにストレートな表現に驚かされる。さらに産経社説は書く。

「今後、米政府は60~90日をかけてWHOによる今回の取り組みの実態を検証する。拠出金の停止措置は米国による厳格な警告だ。WHOはこの間に自らの改革を急ぐべきだ。具体的には事務局長の更迭である」

「事務局長の更迭」とは、沙鴎一歩が「トランプ氏がWHOに次に示す条件」として書いたものと同じだ。産経社説はトランプ氏の自国第一主義を肯定している。それでいいのだろうか。

毎日社説は「トランプ氏は再考すべきだ」と主張する

毎日新聞の社説(4月16日付)は、産経社説とは対照的に「米のWHO拠出金停止 『自分第一』では収束せぬ」(見出し)とトランプ氏を厳しく批判する。

毎日社説は「世界的な感染状況の情報発信やワクチン開発の情報共有などで陣頭指揮をとっているのがWHOだ。米国の拠出額は予算の約15%を占める。この資金が滞れば今後の運営に影響を及ぼす」と指摘した後、こう主張する。

「感染収束に向けた国際的な努力に逆行する姿勢で看過できない。トランプ氏は再考すべきだ」

「看過できない」「再興すべきだ」と強い表現でトランプ氏をいさめているが、違和感はない。新型コロナウイルス感染症が世界で拡大しているなか、いま求められているのが各国の協調と協力だからだろう。

毎日社説は、WHOの誤った情報発信と対応の遅れを批判して検証の必要を求めた後、こう指摘する。