会うまでは「リトルロケットマン」とバカにしていたが…
2人の史上初の米朝首脳会談は2018年6月12日にシンガポールで行われた。この会談が行われるまでトランプ氏と金正恩氏は犬猿の仲だった。ミサイルの発射を繰り返す金正恩氏に対し、トランプ氏が「リトルロケットマン」とからかえば、正恩氏は「老いぼれ」と罵った。
それがどうだろうか。シンガポールでの米朝首脳会談では10秒以上も固い握手をして笑顔を見せ合った。トランプ氏が「とてもいい人だ。頭もよく、優れた交渉者で才能がある。自分の国を愛している」と金正恩氏を褒めちぎると、それに応えて金正恩氏は「すべてを乗り越えてここまできた。会談の実現に努力をしてくださったトランプ大統領に感謝する」とまで謝意を示した。
最近のアメリカと北朝鮮の関係はともかく、この時点でトランプ氏は金正恩氏の心をつかんでいた。
WHOのトップが新興感染症の流行国に乗り込んでいた
交渉相手をとことん追い込み、弱ったところを見計らって助け舟を出し、自分の言うことを聞かせる。これがトランプ氏のやり方なのである。
WHOに対しても追い込むだけ追い込み、その後で国連に何らかの条件を出すだろう。その条件は中国寄りのテドロス事務局長の更迭に違いない。テドロス氏の母国はエチオピアだ。エチオピアはアフリカの中で最も中国と親密だ。テドロス氏はエチオピアで外相と保健相を務めていた。
WHOが中国・武漢市での新型コロナウイルス感染症のアウトブレイク(流行)を察知したのは、昨年12月31日だった。今年1月5日には、WHOは最初の情報を世界に向けて発信している。だが、その発信は「中国では人から人への重大な感染は報告されていない」といういまから考えるかなりお粗末な内容だった。その後も緊急事態の宣言を見送るなど対応には中国への配慮がうかがえた。
なかでも沙鴎一歩が驚かされたのは、1月28日のテドロス氏の訪中だった。訪中して習近平・国家主席と会談まで行っていた。会談の内容は明らかにされていないが、通常、WHOのトップが新興感染症の流行国に乗り込むようなことはまずない。まず入るのは疫学の専門家チームであるのが常識である。それが最初にトップが乗り込んだ。テドロス氏の動きは政治的以外の何ものでもない。トランプ氏の怒りにうなずける側面もある。