まずは準備をしっかりと行う
優秀な部下を相手にするときでも、評価や面談のルールを変えてはならない。
誰のフィードバックをするにしても、まずは準備をしっかりすることが肝心だ。評価の裏付けとなるデータや詳細を集めて、部下の性格についてではなく、必ずその部下がとった行動について論じるようにすること。また、過去よりも、今後改善できる点に重点を置くこと。さらに、話したことを部下自身が理解しているかを必ず確かめ、お互いに次のステップを確認しながら、進展状況の公正な評価方法について合意することなどを、基本的なルールとすべきだ。
基本ルールを前提として、優秀な部下のフィードバックをするにはやはり一定の配慮が必要である。「できる部下は完璧」との思い込みは禁物だ。IMDインターナショナルのリーダーシップ・組織開発の教授で、『The Set-Up-to-Fail Syndrome: How Good Managers Cause Great People to Fail』の共著者でもあるジャン=フランソワ・マンゾーニは、「今の仕事にせよ、未来の仕事にせよ、現在の能力、あるいは将来役立つと思われる能力のなかで、改善できる余地はどんな社員にもあるものだ」と指摘する。
面談の際には、上司として、優秀な部下がさらに成長し続ける方法をともに模索することが肝心なのだ。それができないかぎり、評価のフィードバックは優秀な部下にこそマイナスの作用を及ぼすだろう。
これまでに挙げた仕事の結果が、その部下のすべてを物語るとはかぎらない。優秀な社員は多くの成果を挙げているだろうが、いかにして成果を達成し、どのくらいのコストやどのような代償を要したかを把握することが大切である。
残念ながらできる社員の中には、チームへの配慮や協力関係、あるいは仕事と生活の健全な両立などをあまり顧みずに成果を挙げている者も多い。また、優秀な社員の強みは同時に弱みでもある場合もある。彼らに成功をもたらしている行動について、注意深く考えてみよう。その行動こそが、一方では部下のさらなる成長を阻害する要因になっている場合もあるのだ。
査定面談を最大限に活用するには、部下の「現在挙げている成果」「次に目指す目標のレベル」「長期的目標や願望」の3点に重点を置くとよい。面談を始める前に、この点について話したいと相手に伝えておこう。『Giving Feedback』の著者ジャミー・ハリスは、「面談で何を話し合うのか、事前に説明することは、将来や意思決定に重要な影響を及ぼすような話し合いのときにはとりわけ大切なことである」と述べている。話し合うべき事柄を伝えたら、まずは現在すでに挙げている成果から話し始めよう。