新たな拡散ルートを探り始めたウイルス

新型コロナウイルスの感染経路は、飛沫と接触が主であることがわかってきた。2メートル以上離れた人には感染の確率がほぼない。

だが、このウイルスが多くの感染者を経由して人から人へと感染する過程で、より強い感染手段を進化させる可能性はゼロではない。だらだらと封鎖に向けた対策を続けることは、ウイルスに突然変異の機会を多く与えることになりかねない。

ウイルスにしてみれば、完全封鎖がもっとも行き場を失うのは明らかである。ロックダウンがもっとも功を奏するのは、人間にとって有害な突然変異を作る余裕をウイルスに与えないことである。だが経済と法律が強制的な封鎖を行えないなら、自主的にウイルスの行き場を封じ込めることができるはずだ。これが今の日本の状況である。

最近、動物園のトラや猫への新型コロナウイルスの感染が確認された。ウイルスにとっては新たな感染ルートを得たことになる。生存戦略に有利な性質を新たに獲得する可能性があり、猫から人への感染にも注意を払う必要がある。

見通せない先とかすかな希望

このまま感染者数が指数関数的に増えれば、ぼくたちはもっと多くの大切な人を失うことになるだろう。これは人類とウイルスとの生存をかけた熾烈な闘いである。変異スピードでは人間はウイルスにかなわない。ウイルスの世代交代の速度はとても速く、ウイルスの変異には追いつけない。

ペスト、出血熱、エイズなど、歴史を振り返れば、人類の繁栄の歴史は病原体との闘いであった。しかし、人類が完敗した疫病はない。

戦いはこれからだ。たとえ社会的距離をとってウイルスの感染を抑えたとしても、グローバル経済の現代では、どこから敵の第2波、第3波が襲ってくるかわからない。すでに中国はその対策に入っている。

ワクチンや治療薬の開発は急務であるが、進化生物学的に考えれば、新型コロナウイルスの生存戦略を解き明かし、敵の弱点を探ることもこの災難を凌ぐために大事だと考える。この瞬間もウイルスはさらなる変異を続けている。

(筆者写真 撮影=下城英悟)
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