世界各地に広がる新型コロナウイルスのゲノム情報により、中国・アジア、アメリカ、欧州ではウイルスの遺伝子配列が異なり、3つのタイプに分かれることがわかってきた。世界に拡散するにつれウイルスは変異し続けている。わずか2カ月の出来事だ──。
現代社会はウイルスの拡散と増殖に最適な環境
2019年12月下旬、中国・武漢で未知のウイルスに罹った患者が現れた。2019-nCoV(通称、新型コロナウイルス)と名付けられたこのウイルスは、今年1月26日には2000人以上に感染していた。
感染力はそれほど強くないだろうと油断した人類の隙をついて、それから2カ月でウイルスは世界中で180万を超す人に感染し、11万以上の人命を奪った(4月13日現在)。宿主である人が世界中を行き交うグローバル化した現代世界は、ウイルスの拡散と増殖にとって最適な環境だったのである。
すべての生き物には、ばらつき、つまり変異がある。あなたの知り合いを思い浮かべてほしい。みな姿かたちや性格が違う。動物や植物においても、個体によって行動や花を咲かせる季節に違いがあるようにウイルスにも変異がある。
野生のコウモリは、発症はしないが何種類ものコロナウイルスを体に宿している。ウイルスは世代から世代への期間が短く、絶えず変異しつづけている。変異したウイルスの多くは、これまでにもウシやラクダといった新たなホストに感染して生き残る範囲を広げてきたことがわかっている。
なかでも2002年に中国で発見され、カナダや米国で死者を出したSARSコロナウイルス(重症急性呼吸器症候群)は、ジャコウネコを介して人に感染し分布が広がった。2012年に中東で発見されサウジアラビアを中心に欧州まで広がったMERSコロナウイルス(中東呼吸器症候群)はラクダを介して人に感染し分布範囲を広げた。