食料価格高騰により飢餓や混乱の可能性
07年当時の世界人口は66億7000万人であるのに対し、現在は76億人で113.9%も増えています。増えた人口の多くがアフリカなどの途上国ですから、食料の価格高騰による大規模な飢餓や混乱が発生することは容易に想像されます。実際に07年当時は20を超える国々で食料不足への抗議と暴動が発生しています。
また、当時よりさらにグローバル化が進んでいる背景も手伝って一度食料不足の危機が発生すると大きな混乱を招きます。農業生産現場においては、人件費の安い他国に季節労働者を採用するケースが良く見られます。たとえば、農業輸出大国のアメリカにおいては「H-2Aビザ」を発給することで、メキシコ人が農業現場で働いてきました。少し前までは密入国をしてまで米国に入国していたメキシコ人でしたが、今ではコロナ感染者を多く出すアメリカへの入国を控える事態となっています。こうした状況が続くことで、自国生産にも影響を及ぼしてしまうリスクが顕在化しつつあります。
さて、気になるのが、世界的食料不足においてわが国の置かれた状況についてです。一体、日本はどんな影響を受けることになるのでしょうか。
途上国を中心に社会不安が起こることは明白
結論を言えば幸いにも、日本は大変な災厄に見舞われる可能性は途上国と比べて低いと考えられます。「日本の食料自給率は37%しかないから危ない」という主張が見られますが、これは国際標準ではないカロリーベースでの数値であり、金額ベースで見るならば65%程度と見られます。
日本は多くの米、野菜、フルーツ、牛、豚、鶏などを自国で生産しています。畜産現場で求められるエサはトウモロコシや小麦、大豆などを原料に作られており、それらは他国からの輸入に依存しています。しかしながら、輸入元の多くは米国であり米国においては輸出を制限する予定は今のところはありません。
いずれにせよ、世界的食料不足に陥れば途上国を中心に飢餓や社会不安などが起こることは明白です。コロナショックに端を発した問題は雇用情勢の悪化に続き、食糧危機の発生が迫っているのかもしれません。