食糧危機は異常下でなくても起きる

世界各国とも、自国の食料確保に奔走するのは当然の流れです。過度な輸出制限でコロナウイルスの新たな二次災害が発生する可能性が出てきました。

「食料危機」と聞けば、戦争や今日のコロナショックのような異常な状況下でしか起きえないと感じがちです。しかし、そうではなく、直近では今から十数年前の07~08年にも起きています。07~08年にかけて、世界の食料価格が高騰したことで貧しい国々で経済不安や治安悪化などが発生しました。衆議院調査局農林水産調査室首席調査員の武本俊彦氏によると、次のような流れが主要因であったと分析しています。

1.石油価格高騰
2.補助金でバイオ燃料への転換を推進
3.トウモロコシをバイオ燃料へ
4.バイオ燃料用トウモロコシ栽培で食料不足へ
5.トレーダーによって、石油とトウモロコシ価格が関連付けられトウモロコシ価格上昇
6.途上国を中心にトウモロコシ主食から米や麦へシフト
7.米や麦の需要も高まり、価格高騰

このまま各国が「自国保護」を続けると……

石油価格は04年から高騰し始め、08年7月に147ドル/バレルで史上最高値をつけています。また、07年の世界の穀物生産量は約20億トンでしたが、そのうち1億トンもの穀物がバイオ燃料に替えられていたというのです。05年から08年の間の後半18カ月間で、トウモロコシ価格は74%、米価格は166%上昇しています。

当時と今とでは状況や要因は全く異なります。当時は石油価格が史上最高値をつけていたのに対し、現在の石油価格は約25ドル(20年4月8日)前後を推移、3月には一時20ドルの大台を割り込む事態となりましたから、当時の7分の1ということになるのです。

しかし、各国が自国保護の観点から食料輸出を制限することで、世界的食料不足に陥いるシナリオに突入すれば当時と同じ結果を引き起こす可能性があります。世界的食料不足で大きな混乱を招くことは十分考えられるのです。もしも各国が自国保護による、食料不足に陥った場合の想定被害はどのくらいの規模に及ぶのでしょうか?