「なんでも載っている参考書」からの脱却

▼ポイント1.「やりきれる」ように量を絞る

この10年で最大の変化は「基礎向け」の参考書が増えたことだ。掲載する情報量を絞り、勉強が好きでない子でも「やりきれる」ことに重点が置かれている。『ひとつひとつわかりやすく。』(2009年刊、中学シリーズ全25点で累計333万部)は、その代表例だ。

1冊あたりは100ページ程度で、見開きで1つのテーマを解説して盛り込む内容を極力抑えている。例えば、中1英語の主語と動詞について解説するページでは、「英語の文には主語と動詞が必要、ということだけを知っておくだけでOKです」という具合だ。イラストや図解が大きく示し、練習問題は勉強が苦手な子でも簡単にこなせる内容だ。

写真提供=学研プラス
『ひとつひとつわかりやすく。』

刊行当初は「思い切って削っている」と言われた『ひとつひとつわかりやすく。』は、今では「スタンダードな参考書」と言われるようになったという。

これまで参考書を愛用していた「勉強をする/勉強ができる層」に加えて、「それほど勉強しない/勉強が苦手な層」に対象を広げることで、学参市場そのものが拡大していった。

存在感を放つ「コラボ」学習参考書

▼ポイント2.人気アイドル、ブランド、キャラとの「コラボ」

「普通の子向け」の学参が増えたことから、中身を削るだけでなく、外側も取っつきやすくする流れが生まれた。それがアイドルやブランド、人気キャラクターとコラボした「ライト学参」だ。

アイドルの代表例としては、AKB48が表紙や参考書の中に起用された『AKB48学習参考書』シリーズ(2011年刊)。ブランドの代表例としては、セシルマクビーとコラボした女子中学生向け参考書『セシルマクビー スタディコレクション』(2015年8月刊)、メゾピアノとコラボした女子小学生向けドリル『メゾピアノ ドリルコレクション』(2016年4月刊)がある。

写真提供=学研プラス
写真提供=学研プラス
『セシルマクビー スタディコレクション』

こうした「ライト学参」は子どもたちの勉強に対する気持ちをアゲる効果があるだろう。またファッションブランド側も、「弊社からの提案に対しては『今までにない方法でブランドを周知できる』と先方も乗り気になってくれました」とのことだ。

子どもたちが勉強するきっかけを作る

人気キャラクターとコラボでは、ボーカロイドを用いた楽曲で英単語や理科、社会などを学ぶ中高生向け参考書『ボカロで覚える』シリーズ(2016年4月刊、シリーズ4点で58万部)、『スター・ウォーズ』の名台詞の原語と日本語訳を収録した『スター・ウォーズ英和辞典 ジェダイ入門者編』(2014年11月刊)も話題になった。

写真提供=学研プラス
『ボカロで覚える』シリーズ