「突拍子もない提案でも積極的に採り入れる」
ところで、なぜ学研はこうした新しい学参を次々と誕生させてきたのか。学研の宮崎氏は「いままで参考書を買わなかった人が買うような新しいものを作らないと『参考書はオワコンになる』とさんざん言われてきた」と話す。
「少子化を嘆いても仕方がない。学参市場トップであるわれわれが、その中で最も売れている『ひとつひとつわかりやすく。』を超えるヒットを作ろう、スキマを狙うのではなく『次の王道・定番』を作ろうと部署一丸となって取り組んできました」
本稿で紹介してきたヒット作の多くは、配属されて1、2年目の社員発の企画だ。半分素人と言っていい社員からの突拍子もない提案だったが、それをベテランの編集者たちが正面から受け止め、若手といっしょになって企画を揉み、中身を詰める。その結果、切り口は斬新だが、学研ブランドの参考書として安心感のあるタイトルが次々に生まれた。
市場の衰退を傍観するのではなく、「まだ開拓されていない領域があるはずだ」とチャレンジする。そのチャレンジは結果として市場そのものを拡げることになった。これは出版市場に限らず、あらゆるビジネスにおいてヒントになる事例ではないだろうか。