しかし、こうした「ライト学参」で本当に学力は上がるのだろうか。買っても本当は勉強していないのではないか。学研の担当者は「まずは勉強してもらうことが重要だ」という。
「堅苦しい学参であれば手に取りすらせず、テスト前にも勉強しなかった子が『これならやれる』と思って机に向かう、テスト前に本を開いてみるだけでも大きな変化ですよね。そこから勉強の楽しさに目覚めてほしいと思っています。その結果、いつもよりテストでいい点を取れたら、ほかの参考書や教材もがんばれるようになります。実際、弊社にもそういう声が届いています」(学研プラス 小中学生事業部・宮崎純氏)
机以外の場所でも使える参考書が市場を広げた
▼ポイント3.「机に向かう」を前提にしない
「内容」だけでなく、「勉強する場所/シーン」に対して提案する学参も出てきた。たとえば『寝る前5分暗記ブック』(2013年4月刊、シリーズ3点で約129万部)は「寝る前5分の暗記」にフォーカスして持ちやすいハンドブックサイズで展開して大ヒット。
また、中学生になるとノートではなくルーズリーフを使う子が増えることに目を付け、コクヨとの協業のもと、一枚一枚外して自分が普段使っているルーズリーフと組み合わせて持ち運ぶこともできる『ルーズリーフ参考書』(2017年2月刊)が生まれ、さらにリングカード式のやはり切り取って持ち運べる小学生向けの『小学全漢字覚えるカード』(2017年10月刊)も登場した。これらは一枚ずつでは非常にコンパクトなサイズになり、移動中の勉強需要にも応えるものになっている。
従来の「勉強する子」に「あまり勉強しない子」を加えて顧客層を広げただけでなく、従来の「机に向かって勉強」以外に「寝る前のベッドや布団」「通学中」といった利用場所も広げることで、さらに市場を広げたたわけだ。
自ら学び、考える力を養う参考書
▼ポイント4.暗記以前の「学び方」教える
そんなに勉強が好きではない子たちに対して、いったいどんな学習手段を提供すればいいのか。そこから生まれたシリーズが『わけがわかる』シリーズだ。
コンセプトは「脱・丸暗記」。たとえば暗記科目と思われがちな社会科の場合、「選挙の投票率が低いと、どんな問題がある?」と投げかける構成となっている。投票率の低さという入り口から、選挙に行かない理由や選挙制度の仕組みに関心を広げていく仕掛けだ。
2016年11月刊行の『おはなし推理ドリル』シリーズ全6点は、小説を読んで作中の出来事について推理して設問に答えていく。「謎」や「推理」という入り口から、国語の勉強ができる仕掛けになっており、シリーズ6点で21万部と好調だ。