いまの10代はどれだけ本を読むのか。ライターの飯田一史さんは「1980年代から本離れが進み、90年代末に平均読書冊数と不読率は史上最悪の数字となっていたが、2000年頃からはV字回復している。これは官民挙げての読書推進施策の影響が大きい」という――。

※本稿は、飯田一史『「若者の読書離れ」というウソ』(平凡社新書)の第一章「10代の読書に関する調査」の一部を再編集したものです。

図書館で本を読む学生
写真=iStock.com/JGalione
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「子どもの本離れ」は過去の話

10代の読書に関する各種データを見ていこう。おそらく本章で語られることは、多くの人にとって、メディアで流通している「若者の読書」に対するステレオタイプな議論とはあまりに異なるものだろう。注意して数字を、そしてロジックを追ってきてほしい。

小中高校生の書籍の平均読書冊数、不読率(1冊も本を読まない人の割合)は、全国SLAが毎年行っている「学校読書調査」から推移を見ることができる(図表1参照)。

その歴史の流れを簡単にまとめると、1980年代から1990年代までにかけてはいわゆる「本離れ」が進み、1990年代末に平均読書冊数と不読率は史上最悪の数字となる。

しかし、2000年代にはどちらもV字回復を遂げ、2010年代になると平均読書冊数は小学生は史上最高を更新、中学生は微増傾向を続け、高校生はほぼ横ばいだが、過去と比べて「本離れが進行している」とは言えない。

読書冊数がV字回復したワケ

どうして2000年代にV字回復を遂げたのか。1990年代末から、官民連携をした読書推進の動きが本格化したためである(このあたりの経緯について筆者は『いま、子どもの本が売れる理由』という本に詳しくまとめている。興味のある方はそちらを読んでいただきたい)。

1990年代には児童書市場の衰退に危機意識を抱いた出版社や作家を中心とする業界団体が、児童文学者で1989年に参議院議員となった肥田美代子、および肥田を含む超党派の「子どもと本の議員連盟」「活字文化議員連盟」などを通じて政界へ働きかけを強めた。

1993年には文部省が学校図書館を必要とする教育へと転換(「調べ学習」開始)、「学校図書館図書標準」と「学校図書館図書整備等新五か年計画」を策定する。5年間で学校図書館図書を1.5倍程度増やし、その財源として5年間で約500億円を地方交付税でまかなう措置が取られた。

また、1997年に学校図書館法を改正して司書教諭の原則配置を実現。ほかにも2000年を「子ども読書年」として官民をあげてイベントを行い、同年には上野に国立国会図書館国際子ども図書館が開設。翌2001年には子どもの読書活動の推進に関する法律が公布・施行され、赤ちゃんとその保護者に絵本を手渡しするというブックスタートが全国12地域で本格的に始まる。