小中学生の8割は強制的に本を読む

同年、OECD加盟国の15歳を対象とした学力到達度調査PISAの第1回の結果が発表され、「読解力リテラシー」が参加国中8位となり、日本の子どもは55%が「趣味で読書することはない」と回答、参加国平均の32%を上回っていたことが明らかになる。

これにメディアや教育界が激しく反応。ここから地方公共団体が、小中高校で10分間程度自由に児童・生徒が本を読むという「朝の読書」(朝読)運動やブックスタートを読書推進計画に採用することが増えていく。

(正確に言うと、1990年代末から、朝読の実施校は「学級崩壊」対策として子どもの気持ちを静める効果が注目され、急増傾向にあった。なお2015年以降のランクダウンは読書量は関係ない。コンピュータを用いての回答が求められるようになったが、日本の子どものICTリテラシーが低く対応できなかったため。これがGIGAスクール構想推進の背景となる)。

朝読の実施校数は2000年代を通じて伸び、2010年代以降は横ばいから微減傾向にある(図表2参照)。

朝の読書推進協議会が発表している最新データである2020年3月2日段階での実施率は、全国の小学校の80%、中学校の82%、高校の45%だ(なお、これは新型コロナウィルス禍に入りたての時期の数字であり、それ以前はもう少し高かった)。

つまり小中学生の8割は学校で半ば強制的に本を読む時間がある。したがって、学校生活や自治体の計画に読書推進が組み込まれていなかった1990年代までと比べて、この年代の不読率が激減するのは当然である。

学外でも「書籍」を読むように

実際、読書の効果について定量的な研究を行っている北里大学の猪原敬介が、ベネッセと東京大学が共同で実施した「子どもの生活と学びに関する親子調査Wave1〜4,2015-2019」を用いて「学校外」に限って読書活動について分析したところ、不読率は学校読書調査よりも約6〜30%ほど高く出ている(図表3参照)。

2022年の学校読書調査では書籍の不読率は小4〜6で6.4%、中1〜3で18.6%、高1〜3で51.1%。

対して、ベネッセと東大のパネル調査により「学校外読書」に限ると、不読率は小4〜6で3割弱、中1〜3で約4割、高1〜3で5割強になる。この差分が「学校でしか本を読まない子ども」の割合と言える。

もっとも、学校読書調査上で「子どもの本離れ」がピークに達していた1997年には、不読率は小学生15.0%、中学生55.3%、高校生69.8%。それに比べれば、学校外に絞っても今の中高生のほうが「書籍」を読むようになっていることは間違いない。