「マスクは感染症流行時の必需品」は間違いである
「インターネットのSNS(会員制交流サイト)で、『トイレットペーパーやその原材料を中国に依存している』などの誤った情報が出回り、買いだめが始まった。生活必需品の急な品薄を知った消費者は不安を募らせ、買いだめに走る連鎖が起こった」
そこで産経社説は主張する。
「だが、日本家庭紙工業会や政府が説明するように、生産量も在庫も十分だ。ほとんどが国内で生産され、原材料も中国に依存していない。最初に誰がどのような意図でデマを流したのか、経緯を解明しなければならない」
ここまでは問題ない。十分、納得のいく主張である。問題はマスクについての以下のくだりである。
「消費者がデマに乗せられたのは、マスクを容易に入手できない状況も影響している」
「3月中にマスクの国内製造は月産6億枚になるという。政府はメーカーの製造ライン増設の補助金を設けたが、先週の段階で3件の決定では到底足りない。増設のインセンティブを強める思い切った手を打つべきだ。マスクは感染症流行時の必需品だが、中国からの輸入に7割も依存する状況を放置し備蓄も十分でなかった。平和ぼけであり政府は反省すべきだ」
産経社説は「マスクは感染症流行時の必需品」とまで言い切るが、これは間違いである。感染症の問題に疎い論説委員が知ったかぶりで書いたのではないか。こうした間違いがマスク不足を助長し、人々の不安を募らせてパニックを呼ぶのである。
「首相の決断」が人々の不安を煽る結果となっている
マスクは使い方が難しい。脱着を誤ると、感染を広げてしまう危険性がある。とくにインフルエンザウイルスと同じように飛沫感染したり、接触感染したりする新型コロナウイルスには、マスクよりも手洗いのほうが効果的だ。マスクは「着用しないより、着用したほうがベターだ」ぐらいに考えたい。
詳細は2月12日の記事「新型コロナには効果の薄いマスクを、なぜ人々は必死で求めるのか」で書いたので、ここでは繰り返さない。
産経社説は「緊急時に政府は、国民のために権限をふるうことをためらってはいけない」とも主張するが、これにも驚かされる。「国民のために権限をふるう」という表現自体がおかしい。読者も納得しないだろう。
現在の安倍政権は、自らの権力維持のために新型コロナウイルスを逆手に取っている。新型コロナウイルスに対する一連の政策を見ていると、「首相の決断」が人々の不安を煽る結果となっている。安倍晋三首相が私たち国民のことをどこまで本気で考えているのか、疑問に思う。