コロナウイルスは「冬の風邪」の原因になってきた
コロナウイルスは常在化すると、冬の寒い季節に活発になって風邪の原因になる。これまで見つかっている人に感染するコロナウイルスは計6種類。人間界に常在化して人に感染する4種類と、コウモリなどの動物を自然宿主としていたものが、突然変異を起こして人に感染するようになり(初めから人に感染する性質を持っていたとの説もある)、重症の肺炎を引き起こす2種類だ。
後者の2種類は、2002年~2003年にかけて中国を中心に流行した重症急性呼吸器症候群のSARS(サーズ)コロナウイルスと、2012年以降に中東で確認され、いまも流行している中東呼吸器症候群のMERS(マーズ)コロナウイルスである。
新型コロナウイルスはSARSやMERSの仲間で、武漢(ウーハン)市の海鮮市場のタケネズミのような動物を宿主としていたものが、人の世界に入り込んだとみられている。
SARSは発生から半年後に「終息宣言」を出せたが……
SARSは広東省で発生した後、香港、シンガポール、台湾、アメリカ、カナダなどで市中感染を起こし、最終的に32の国・地域へと感染が拡大した。感染者は8096人(うち774人が死亡)だった。
病院や介護施設など人と人とが密接に接触する場所で集団発生が次々と起き、1707人の医療従事者も感染した。1人の感染者が多くの人に感染させる「スーパー・スプレッディング」と呼ばれるケースも確認された。
結局、WHO(世界保健機関)が終息宣言を出したのは、最初の発生確認から半年以上経過した2003年の7月5日だった。
SARSの症状は発熱、筋肉痛、咳、呼吸困難、下痢。飛沫感染と接触感染で感染していく。新型コロナウイルスとよく似ている。しかし、SARSの致死率は9.6%と、新型コロナウイルスの致死率(約2%)よりもかなり高い。