セブンが重視しているのは“夜間人口”

セブン‐イレブンが出店の際に重視しているのは、人口量は人口量でも“夜間人口”の市場規模です。夜間人口とは、いわゆる居住人口で、そのエリアに住んでいる人の数を指します。その人口量に比例させて、出店数を増やしているわけです。

榎本篤史『東京エリア戦略』(KADOKAWA)

都内でセブン‐イレブンが一番多いエリアは足立区、世田谷区、大田区などで、出かける街というよりは、住む街のイメージがあるエリアです。セブン‐イレブンはお惣菜にも相当力を入れており、夕飯の助けとしている人も多いのではないでしょうか。

また、人口の「質」の差に加えて、イメージを重視しているところも2社の大きな違いです。スターバックスが多く出店しているのは、千代田区(45店舗)、港区(40店舗)、渋谷区(38店舗)、新宿区(31店舗)、中央区(23店舗)など、人口が多いだけではなく、青山や麻布、六本木、丸の内や渋谷、代官山など、スターバックスのドリンクを手に持って歩くと格好がつくような場所を選んで出店しているのです。

荒川区には23区で唯一スタバがない

実は23区で唯一、荒川区だけにはスターバックスの店舗がありません。荒川区のメインエリアと言えば、日暮里、南千住、町屋など、魅力ある街はあれど、流行に敏感でオシャレな若者が大勢行くようなところではない気がしますよね。昭和の雰囲気の残る下町エリアなので、年を重ねた方のほうが楽しめるエリアだと思います。

今、このように「イメージ」や「感性」を重視したエリア戦略を取る企業は増えています。図表2を見ると、スターバックスが好きな街、エリアの傾向が、すぐにハッキリとわかりましたね。市場性が高く、店舗数が多いエリアは右上に配置されますが、千代田区、港区、渋谷区、新宿区、中央区と、いかにスターバックスが「人が集まる人気のエリアでお店を展開する」という出店戦略に忠実かがわかります。

このように、セブン‐イレブンは夜間人口が多いエリア順に出店を、スターバックスは昼間人口の多さ+街のイメージとブランドがマッチしたエリアから出店を進めています。大手企業の出店傾向を比較するだけでも、それぞれの商圏に関する考え方、エリア戦略の違いがわかります。