生涯使える自分専用の「健康物差し」

飯島教授らが考案した「指輪っかテスト」は、親指と人差し指で円をつくり、足のふくらはぎの一番太い部分を囲むというもの(図1)。ふくらはぎには余計な臓器がなく、皮下脂肪もつきづらいため、全身の筋肉量が反映されやすいと考えられる。

指輪っかテストをすると、ふくらはぎを(指で)「囲めない」「ちょうど囲める」「隙間ができる」の3パターンに分かれるが、隙間ができてしまう人は要注意。筋肉が衰えている可能性が高いという。さらに驚くべきことに、自立高齢者を対象とした最新研究では、ふくらはぎを指で「囲めない」群と比較し、「隙間ができる」群は4年間で死亡リスクが3.2倍も高まったのだ。

「ふくらはぎの太さは全身状態を多方面から表します。『囲めない』群と比べ、『ちょうど囲める』群と『隙間ができる』群は、握力や歩行速度などの身体能力や睡眠の質、食事摂取量、口腔の健康度が劣ります」(飯島教授)

ちなみに各々の指輪っかのサイズは、大柄な人は大きく、小柄な人は小さいというように身長に比例し、さらに5年後も10年後もそのサイズが変わらない。飯島教授は「背中が丸くなって身長が縮んでも使える、生涯不変のマイ(My)物差し」と話す。

それでは自分の親が何だか痩せてきた、指輪っかテストも芳しくない状態である場合、子供である現役世代にできることはあるのだろうか。

「『まさか痩せようと思っていないよね?』と聞いてください。持病がないのにコレステロールを気にして肉を避けるなどの偏食傾向がないかどうか。私が全国各地で調査をしていると70代の約6割近くが痩せようとしています。

たとえば54歳の私と、もうすぐ80歳になる男性がいたとします。どちらも腹が出ているからダイエットに取り組み、お互いに3キログラム落としたとしましょう。けれど、そこで起こる現象はまるで違う。私がダイエットをすると脂肪を中心に減りますが、80歳男性は筋肉が落ち、免疫力や身体能力の低下につながってしまうんです」(同)

人生のステージによって「ギアチェンジ」が必要という。大まかに中年期ではメタボ対策が重要で、カロリーをセーブすることで肥満や動脈硬化を防ぐ。しかし「高齢者は“現役以上”のタンパク質摂取」がフレイル予防になることを知っておきたい。年とともにタンパク質摂取→筋肉量増加への変換効率が悪くなるためだ。

タンパク質は一日に、体重1キログラムあたり1グラム以上必要とされる。つまり体重60キログラムの人は60グラム以上のタンパク質摂取となるが、目指すはその1.2~1.5倍にあたる70~90グラムだ。