高齢者の健康で運動以上に大切なもの

そしてもう1つ、飯島教授が行った研究で興味深いものは、約5万人の自立高齢者を対象に(1)身体活動、(2)文化活動、(3)ボランティア・地域活動の有無と、フレイルのリスクに関する調査だ。(1)から(3)まですべて行っていない人は、すべて行っている人と比較するとフレイルになるリスクが16倍も高い。それも恐ろしいが、注目すべきは(1)の運動習慣だけ持つ集団より、(2)と(3)の習慣を持つ集団のほうがフレイルになっているリスクが低かったのだ。

「たとえ運動習慣がなくても、ほかの2つを継続的に行えば健康体を維持できる可能性が高い。歌うのが好きならみんなでカラオケを楽しめばいいし、囲碁が好きなら囲碁クラブへ。その過程で身体活動が増えるでしょう」(同)

つまり、家庭内でも地域でも他者とつながり、「ソーシャル(社会性)」を失わないことが最重要課題。

現役世代が親世代にできることは、治療が必要な病のサポートだけでなく、フレイルの概念を教えてあげること。そして食事の内容よりも、時々、一緒に「食卓を囲む」こと。親が要介護の期間を短く、ゆるやかに穏やかに年を重ねられることで、親子で相続の話ができる時間も延びていく。まずは子が“親の衰え”に気づく必要がある。

飯島勝矢
飯島勝矢
東京大学高齢社会総合研究機構
 

望月理恵子
望月理恵子
管理栄養士
Luce(ルーチェ)代表
 
(図版作成=大橋昭一)
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