二枚貝類が大量死していた可能性がある
それでは海底地盤が液状化すると、底生生物はどのような影響を受けるのでしょうか。
通常、液状化した地盤の密度は、底生生物の体のそれよりも、高いことがほとんどです。その結果、液状化した海底地盤の中では、埋在性底生生物の多くは浮き上がってしまいます。
多少強引なたとえですが、密度の低いヘリウム風船が、空気中で上方に上がっていく様を想像して頂くとわかりやすいでしょう。相対的に密度の低い物体が、浮力で浮かび上がるのです。
では大震災の地震動によって、海底で何が起こったのでしょうか?
たとえば、海底液状化により堆積物中に生息する二枚貝類などが浮かび上がり、大量死した可能性が示唆されています。地面に深く潜っている底生生物が地表面まで浮かんでしまうと、ふたたび同じ場所に戻ることができずに死んでしまうのです。また、海底液状化が生じると地盤の中の水が抜けるので、元の状態よりも硬く締まった地盤になります。このことが、底生生物がふたたび地面に潜ることを困難にします。
大津波は底生生物の生活基盤を“根こそぎ”変えた
次に、大津波によって沿岸の底生生物が、どのような影響を受けたのかを考えてみましょう。
2011年の大津波は、最近生じた津波の中でも強烈なインパクトをもたらしました。リアス式海岸のように湾が奥まっている場所では津波の高さが増幅され、普段の海面の高さから約40メートルもの高さまで到達した例があったほど。それだけの高さの波が押し寄せれば、相当な破壊力を持っています。
大津波が起こると、海底の堆積物は急速に削剥(さくはく)されます。そして一方で、削剥された土砂は別の地点に急速に堆積していきます。
普段とは桁違いの規模の浸食・堆積作用によって、多くの底生生物は洗い流されたり、生き埋めになったりしました。また、海底の基質が津波によって泥底から砂底へ、あるいはこの逆のパターンで置き換わったりもしました。つまり大津波は、底生生物の生息基盤である海底を、文字通り“根こそぎ”変化させてしまうのです。