地表の7割を占める海底。そこに穴を掘って暮らしているのが「底生生物」だ。海底生物学と海洋地質学を専門とする清家弘治氏は、「わずか5センチほどの体長でありながら、“最強”と呼ぶにふさわしい底生生物がいる」という――。
※本稿は、清家弘治『海底の支配者 底生生物』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。
カニ、エビ、貝は「底生生物」の一種
最大の、最小の、最長の、最古の……。
生物に関する記述で、そういった表現が付いていると魅力的に聞こえます。それでは、「最強」というのはどうでしょうか。何をもって「強い」とするのかは難しいところなので、「最強」という言葉は科学的な表現としては不的確かもしれません。しかし、「最強の生物」と聞くと、なんだか凄いものを想像してしまいます。
これらを踏まえて、私が勝手に「最強の底生生物」と呼んでいるものがいます。それがウニの仲間である、オカメブンブクです。
なお、そもそもですが、私は底生生物というものを研究している科学者です。そして底生生物とは端的にいって海底の下、あるいは海底面の上に生息している生き物の総称です。
実は底生生物とは私たちの生活に、ごくごく身近な存在でもあります。たとえば食材として馴染み深い貝、カニ、エビなどがそれに該当しますし、ニョロニョロとした体のゴカイも底生生物の一種となります。生物学的な分類としては、軟体動物、節足動物、環形動物に分類されますが、あくまで生活型による分類では、これらは全て底生生物に該当します。