「授乳中の母親は飲酒をしてはいけない」「カフェインを摂取してはならない」。赤ちゃんを持つママに関するこうした「噂」は正しいのか。医師であり自らも母親である森田麻里子氏が、科学的根拠に基づいてさまざまな疑問に答えていく——。
※本稿は、森田麻里子『科学的に正しい子育て』(光文社新書)の一部を再編集したものです。
母親が摂取したアルコールは赤ちゃんに影響するか
授乳中のアルコールについても、妊娠中と同様に「できれば避けたほうがいい」「このくらいなら大丈夫」などいろいろな意見があるので、混乱してしまうかもしれません。
そもそも、ママが摂取したアルコールは、どのくらい母乳に出てくるものなのでしょうか?
実は、吸収されたアルコールは母親の血中からすみやかに母乳中に入っていき、母乳中の濃度は母親の血中とほぼ同じになることがフィンランドの研究からわかっています。
たとえば50キロのママが30グラム、つまりビール500ミリリットル程度のアルコールを摂取して30〜90分後に赤ちゃんが200ミリリットルの母乳を飲んだとします。
すると、赤ちゃんは母乳を介して約0.15グラムのアルコールを摂取することになります。これを体重あたりで換算すると、ママが摂取したアルコールのおよそ5パーセントになります。
そのため、授乳中のママがアルコールを多量に摂取すると、赤ちゃんも母乳を介してある程度の量のアルコールを摂取することになり、短期的には赤ちゃんが傾眠状態になったり、ホルモンバランスが崩れたりする可能性があります。しかしこれまでの研究では、長期的にどのような影響があるか、また赤ちゃんの発達にどんな影響があるかは、まだ意見が一致していません。