バイロンやシェイクスピアを愛好するインテリ

歴史に残る外交三賢人』ではこの複雑な外交家ビスマルクを、七つに分けて解説した。それらは、①ビスマルクと明治日本②厄介な「ドイツ問題」を創り出したビスマルク③ビスマルクの生い立ちと性格④無軌道で放埓な青年期⑤冷徹鋭利な外交官に変身⑥果敢な武断主義者としてドイツを統一⑦慎重で避戦的な勢力均衡主義者として西欧外交に君臨、の七項目である。

伊藤貫著『歴史に残る外交三賢人』(中公新書ラクレ)

「傲岸な鉄血宰相」ビスマルクは、実は教養レベルの高いインテリであった。彼はバイロンやシェイクスピアを好み、ウィットに富んだ会話の最中にバイロンの詩やシェイクスピア劇の台詞を原語で(流暢な英語で)巧みに引用して、周囲の人たちを楽しませた談話の名人であった。そして、そのビスマルクの人生自体がByronic でShakespeareanな「激情と苦悶とパラドックスに満ちた壮大な歴史ドラマ」だったのである。

19世紀後半期のヨーロッパに突然、ビスマルクという国際政治の巨人が出現したため、その後の欧州史は根本的に変化してしまった。1860年代から1890年までのビスマルク外交を理解しなければ、20世紀前半期のヨーロッパ外交の悲劇(二度の世界大戦)も理解できない。その意味においてビスマルク外交を理解することは、過去一世紀半の間の国際政治を理解するために不可欠な事項なのである。

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