医療機関と製薬会社の癒着が過剰処方を誘発する
2019年6月3日の東京新聞が1面トップで報じた記事によれば、日本製薬工業協会に加盟する製薬会社71社が、2017年度に、大学病院や医療系の各学会に288億円を寄付していたことが明らかになった。
協会側は「寄付金は医療機関の教育・研究に重要な役割を果たしている。透明性ガイドラインで、営業部門から切り離した組織が、提供の是非を判断している」などとして、利害関係を否定しているが、額面通りには受け取れない。
かつて大学病院に所属していた私から見れば、昔ほどではないにせよ、医療機関と製薬会社の癒着がなくなったと考える方が不自然だ。
「このあいだA製薬の方に世話になったから、今月はA製薬の処方、強化月間な。みんなよろしく」
このような先輩医師からの指令は、日常的だった。
製薬会社の収益は窓口負担・税金・医療保険料が原資となっているのだから、製薬会社が誘発する需要というのも医療費問題を考える上では決して無視できない。
相次ぐ新薬の登場に、医師である私たちでさえ、期待と不安に翻弄されているのが現状だ。薬剤に対する過度な忌避も問題だが、過剰な期待も依存も禁物であることを、自戒を込めて再度確認しておきたい。