セブン‐イレブンは、それ以前は地域メニューを2~3割程度としていたが、この時代は逆転して7~8割としている。ちなみに全国統一メニューには、地域性を出しにくい、ネギ塩豚カルビ弁当や牛カルビ弁当、カレーライスといった商品がある。

コンビニが提供する弁当が地域の味ばかりでは、当の地域の人たちにとってつまらない。かといって、よく知らない流行のメニューばかりだと手を出しづらい。おそらく、地域のニーズを取り入れた食べ慣れた味と、多少は目新しい商品との程よいバランスが望まれているのだろう。

日本の伝統食をコンビニに取り入れた「おでん」

一般には、「おでん」を購入する店は、スーパーマーケットの袋物を除けば、コンビニ以外は考えられないだろう。日本の伝統食がコンビニ食として定着し、アジア諸国にもコンビニのおでんは波及している。

70年代後半には、おにぎり、弁当といったデイリーフーズがコンビニの核売場として拡充されつつあった。こうした他の業態では扱っていない目的来店性の強い商品は、価格競争にさらされず、粗利益も高く店舗にとっては大歓迎であった。

そうした独自商品を拡充する流れの中に「おでん」がある。商店街の中には、おでん屋も存在していた時代であり、一定の需要は見込まれていた。ポイントはコンビニの従業員が、容易に販売できるかどうかにあった。

セブン‐イレブンは79年に専用の什器「おでんウォーマー」を開発、具材を並べて、つゆを希釈して、什器の中で温めるだけの「コンビニおでん」の販売を一部地域でスタート、82年には全国に展開させた。

スーパーより管理しやすく、単価も上げられる

コンビニは「家庭の冷蔵庫」と呼ばれるくらい冷えた商品を品揃えしている。7月の後半が一年を通して最も売上が上がる一方で、秋冬の売上対策を求められていた。特に夕夜間は、時間に余裕のある消費者がスーパーマーケットに流れるため、秋冬の夕夜間に目的買いされる「コンビニおでん」はうってつけであった。

おでんはスーパーマーケットの差別化にもつながった。おでんの什器はカウンター上に設置するため、常に従業員の目が届く範囲にある。客がセルフでカップに取るか、従業員がサポートするか、店舗によって違いはあるものの、おでん什器を、しっかりと管理できるのがコンビニの強みであり、スーパーマーケットにはできない販売形態であった。

また、客単価の向上にもつながった。おでんの購入は1品だけではなく、3品、4品と複数の購入が一般的である。玉子、大根は必須アイテムとして、他の具材についてもバラエティをもって品揃えし、はんぺん、昆布巻き、厚揚げ、がんも、白滝、こんにゃくなど、充実させて客単価を高めていった。