日本の手荷物検査は効率が悪い

――インバウンド増に空港はどのように対応しますか。

【山谷】私たちが最も重視しているのは、サービス・レベルの向上です。例えば、ほかの空港に先駆けて「スマートレーン」という取り組みを始めました。ヴァンシから来たスタッフに「日本の手荷物検査は効率が悪い」と指摘されたことが発端ですが、世界の潮流は、前の人が検査に時間がかかっている場合、後ろの人が抜いていくことができる仕組みです。

(左)手荷物検査の効率を上げるスマートレーン。(右)航空会社を問わず手続きができるチェックイン機。

はじめ日本人のメンタリティだと、抜かされることに抵抗があるかもしれないとも思いましたが、それぞれのペースで進める利点がある。問題のある荷物はほかのレーンに行く、というシステムです。これによって、手荷物検査の効率は上がりました。もう1つ、19年夏の台風による被害の反省から、新しいBCP(事業継続計画)を導入しました。緊急時の連携体制を整備し、また1万2000人がフルに3日間空港に滞在されても大丈夫なだけの水とシュラフ(寝袋)を用意しました。

今後は顔認証のようなIT技術をチェックインに取り入れるなど、さらにサービス・レベルを上げていきたいと考えています。

20年の東京五輪に続き、25年には大阪万博が開催されます。それに向けて、効率化を進めながらも、関西らしいサービスを提供したいと考えています。

戸崎 肇
桜美林大学教授
1963年、大阪府生まれ。京都大学経済学部卒業後、日本航空に入社。京都大学にて博士号(経済学)取得。明治大学、早稲田大学、首都大学東京教授などを経て、2018年より現職。
 

鷹城 勲
日本空港ビルデング会長CEO
1943年、徳島県生まれ。青山学院大学卒業後、日本空港ビルデングへ入社。95年取締役、2003年に代表取締役副社長、05年に代表取締役社長に就任。16年より現職。
 

山谷佳之
関西エアポート社長CEO
1956年、大阪府生まれ。神戸大学卒業後、80年にオリエント・リース(現オリックス)へ入社。オリックス信託銀行などグループ会社の社長を務め、2015年オリックス副社長。同12月より現職。
 
(撮影=研壁秀俊、土屋 剛)
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