ミュージアムが担うべき本当の役割とは
ただ、課題も少なくない。現状では、どの車両や施設を、どのような形で保存するのかは、鉄道事業者の判断に委ねられることになる。仮に保存するとしても、修復や維持には専門的な技術と多大な費用を要することから、歴史的・技術的に価値のある鉄道車両、施設でも解体されてしまうことが多い。産業遺産の認定と維持、管理をどのような体制で、誰の費用負担で進めていくかという問題は、鉄道事業の経営環境が厳しくなっていく中で、ますます問われることになるだろう。
また、こうした文化遺産・産業遺産は鉄道事業者だけにあるわけではない。今回、京急が復元したデハ236号車がそうだったように、鉄道事業者の手から離れて以降、管理が行き届かず朽ち果てようとしていたり、ボランティアの献身的努力によって、なんとか維持されている鉄道文化財は多い。
鉄道事業者の協力なくしては鉄道遺産の維持、管理は不可能である。しかし、鉄道事業者だけに任せていては、守られる文化財は限られてしまう。事業者と地域、利用者が資金や人手、技術などを持ち寄り、協力して文化を守り、伝えていくことができれば、それこそが最高のブランドの育成につながるはずだ。企業ミュージアムがそうした活動の中心となっていくことを期待したい。