米中貿易摩擦は一段の悪化を回避

一方、消費者物価の上昇率や失業率などで“合格点”の状況にある米国経済にとって、大きな懸念材料として考えられるのが、図4で日本の国内経済に対するマイナス要因でトップにもなっている米中貿易摩擦だ。トランプ政権は米国内の企業や雇用を守るため、18年夏以降、合計約3600億ドル分もの中国製品に最大25%の制裁関税をかけてきた。しかし、中国側も対抗措置として米国製品に報復関税を課すようになり、米国経済も無傷ではいられなくなっている。

そこで再選が最優先課題であるトランプ大統領にしてみれば、あまりにも中国を締め付けすぎて、米国経済を失速させるような事態に陥ることは避けたいところだ。それゆえ、旭化成の小堀秀毅社長は国内景気のプラス要因に「米中合意」をあげ、伊藤忠商事の鈴木善久社長の「米中貿易摩擦はひとまず合意に至り、世界経済は徐々に持ち直し」という見方も浮上する。

実際、19年12月13日に米中両国政府は貿易交渉で「第1段階の合意」に達し、米国は第4弾の対中制裁関税の発動を見送った。その結果、図3で見たように20年は米国経済の底堅い展開が予想されるのだろう。

そして、ドル円相場についてだが、図6と図7を見てわかるように、20年は年央の6月と年末の12月時点ともに、1ドル=108円を予想している経営トップが最も多い。片や足元のドル円相場はどうかというと、19年の秋口以降、同108円を挟んでの膠着状態だ(図8参照)。ということは、多くの経営トップが現在の水準と変わらないことを前提に、今後の自社の経営を考えていることが推察される。

「結局のところ、トランプ大統領が再選を果たしても、米中関係については貿易摩擦を含めて、これ以上悪い状態に追い詰めるようなことは考えにくい。一方、民主党の候補が新大統領になったとしても、トランプ政権下で複雑に絡み合った米中間の糸がすぐにほぐれることは、やはり考えにくい。そうしたこともドル円相場の予想に影響し、現状とほぼ同水準で判断していこうという心理に結びついているのではないか」と小宮氏はいう。

企業業績向上で株高を期待

次に日経平均株価だが、図9にあるように高値については、2万4000円台を13人、2万5000円台を12人の経営トップが予想している。また、図10を見てわかるように安値については、2万2000円台が14人で最も多く、2万1000円台の10人がそれに続いている。

つまり、20年については多くの経営トップが、日経平均株価の一段高を予想していることになる。これはどういうことを意味しているのだろうか。小宮氏は次のように分析する。