「国内景気の先行きについては厳しめに見ているものの、底堅い米国景気が期待できるうえに、これまで自分たちが取り組んできたコスト削減などの合理化効果が見込め、企業業績が上向くことで株式相場全体の底上げを予想しているのだろう。そこには経営トップとして『そうなってほしい』という願望も込められているのだと思う」
そうしたなか、成長や株高が最も期待されているのがIT・情報通信だ(図11参照)。20年は移動通信規格が「4G」から100倍近い通信速度の「5G」へ移行する。それにともなって通信設備の切り替え需要の拡大が確実視される。
また、3人の経営トップが推す建築・土木だが、冒頭で触れた大規模自然災害への備えと絡んで要注目といえよう。なぜなら「財政が厳しい状況ではあるが、安心して暮らしていけるインフラの整備に向けて、国費の最適配分を真剣に考えるべきだ」(SOMPOホールディングス・櫻田謙悟グループCEO)という後押しの声があり、堅実な成長が見込めそうだからだ。
経営トップが注目経済指標の中身
最後に気になるのが、日本国内の景気が腰折れしないかどうか。その点においてはローソンの竹増社長が先に指摘していたように、消費増税対策であるポイント還元に続く次の一手が重要になる。小宮氏がそのための政策と捉えているのが、19年12月5日に政府が閣議決定した、国や地方からの財政支出が13.2兆円となる経済対策だ。
そして、その効果が今後の経済指標にどう表れてくるのか気になるところで、図12にあるように多くの経営トップは、為替レート、株価、GDPなどオーソドックスな指標に目を向けている。しかし、なかには三井住友フィナンシャルグループの太田純グループCEOのように「速報性も高く、景気の肌感覚に近いとされる景気ウオッチャー調査を重視している」という活用法もあり、ぜひ見習いたい。
また、小宮氏は経済指標を見ていくうえでのポイントとして、「自分が決めた指標を、定点観測することが何よりも重要だ」という。19年12月13日に発表された最新の日銀短観の大企業・製造業のDIはゼロ。19年に入って下がり続けてきたわけだが、20年4月初めの次回発表で、このDIがどのような数字になるのかで、より深刻な状況になるのか、それとも明るい兆しが見いだせるのか、重要な判断指標となりそうだ。