「今回のアンケート調査を行った期間中にすでに発表になっていた、19年9月時点での日銀短観(全国企業短期経済観測調査)の大企業・製造業のDI(業況判断指数)は、かろうじてプラスの5となっている。中小企業のそれはすでにマイナス圏内で、足元の景気の悪さを肌で感じ始めており、20年の見通しについては控えめな予想をしたのではないか」と、経済予測で定評のある小宮コンサルタンツ会長兼CEOの小宮一慶氏はいう。

翻って、米国はどうかというと、実質GDPの成長率を2.1%と予想する経営トップが9人いて一番多い。次に1.8%と1.9%が各8人、そして2.0%が7人いる(図3参照)。つまり2%前後の成長という“底堅い米国の景気”を見込んでいるわけで、日本経済の先行きとは一線を画す。

足を引っ張る消費増税の影響

では、何が日本経済と米国経済との明暗を分けているのだろう。小宮氏は「日本ではGDPの約55%を占める個人消費が、19年10月の8%から10%への消費増税で足を引っ張られる可能性がある」と指摘する。

実際に図4にあるように、国内景気に対するマイナス要因として、15人の経営トップが消費増税の影響・対策終了をあげ、2番目の懸念材料として浮上している。確かに消費増税の影響を緩和するため、キャッシュレスでの支払いに、5%のポイント還元が行われている。しかし、それも20年6月までの時限的な措置でしかない。

それだけに「ポイント還元の後押しがあるものの、その還元が終了するまでにどのような手が打てるかが勝負」(ローソン・竹増貞信社長)という声があがってくる。指摘した経営トップの数こそ3人と少ないが、個人消費の下振れがマイナス要因に顔を出しているのも気になる。

逆にそうしたマイナス要因を打ち消すものとして期待されているのが、東京五輪と、それにともなうインバウンド(訪日外国人旅行)の増加だ。図5を見てもわかるように、20人の経営トップが推している。それを代表するのが、「国内景気も2~4月の底入れ後、東京五輪の盛り上がりと経済対策の効果から回復を期待」というセコムの中山泰男会長の見方である。

図1の印象に残ったニュースには、日本チームの大活躍が記憶に新しいラグビーワールドカップが第3位につけている。その経済波及効果は4300億円とも推計され、開催規模がそれよりも格段に大きい東京五輪に期待がかかるのも当然だろう。

「ただし、前回大会のときの日本のGDP規模は30兆円ほど。それがいまでは約18倍の550兆円規模になっている。実際にラグビーワールドカップ以上の経済波及効果はあるだろう。しかし、全体に対する影響を冷静に考えると、そう大きな期待をかけられるほどではない。消費増税によるマイナスの影響を下支えする要因として考えるくらいに、とどめておいたほうがいいのでは」と小宮氏は指摘する。