フランスでも「予審判事」で最長4年8カ月間の勾留
実際、日本とフランスでは司法制度が異なる。日本では検察官が容疑者を逮捕した場合、48時間以内に裁判所に勾留を求め、認められれば起訴まで最長で20日間、容疑者を勾留できる。再逮捕すれば、再び勾留請求が可能となる。さらに否認を続ければ続けるほど、裁判所が逃亡や証拠隠滅の恐れを理由にして起訴後も保釈を認めないケースが多い。
ところがフランスでは、捜査の初期は裁判官の令状なしに原則1日の「警察勾留」が可能だ。検察官が「さらなる拘束が必要だ」と判断すると、「予審」という公判前の手続きと勾留を同時に求める。これが認められれば、捜査の担当は検察官を指揮する「予審判事」に引き継がれ、原則1年以内、最長で4年8カ月間も勾留できる。
要はフランスのメディアは、日本の勾留とフランスの警察勾留(原則1日)とを混同しているところがある。ただフランスでは無罪推定の考えが強く、勾留は最後の手段であり、経済事件では在宅捜査が一般的だ。さらにアメリカやヨーロッパの国々では取り調べに弁護士の立ち会いが認められているが、日本では認められていない。
司法制度は国によって違う。だが、逮捕・起訴された当人が「公正でない」と批判するのはおかしい。しかも法を破り、海外逃亡してから批判するとは姑息だ。人質司法の問題とゴーン氏の事件は分けて考えるべきだと思う。
いまだ仏ルノーや日産の会長のような態度だった
1月8日午後10時過ぎ、ベイルート市内の記者会見場に現れたゴーン氏は黒っぽいスーツに赤いネクタイを着け、「私にとって重要な日だ。この日を楽しみにしていた」と力強い表情で話し出し、持論を大きな身ぶり手ぶりでまくし立てた。
沙鴎一歩はこの会見をテレビで見たが、刑事被告人とは思えない態度で、いまだ仏ルノーや日産の会長のつもりでいるように見えた。
日本政府はすぐに法務省と検察が強く反論した。森雅子法相は9日午前0時40分から緊急記者会見を開き、「主張すべきことがあるのなら、わが国の公正な刑事司法手続きの中で主張を尽くし、正々堂々と公正な裁判所の判断を仰ぐことを強く望む」と語った。