妻との接触禁止は、妻を通じて証拠隠滅を行ってきたから

東京地検の斎藤隆博・次席検事も9日午前0時過ぎに次のようなコメントを出した。

「犯罪に当たり得る行為をしてまで国外逃亡したもので、会見内容も自らの行為を不当に正当化するものに過ぎない」
「妻との接触の禁止は、妻を通じて証拠隠滅を行ってきたことを原因としている。被告自身の責任によるものだ。我が国で裁判を受けさせるべく、関係機関と連携して、できる限りの手段を講じる」

ゴーン氏は記者会見で、妻のキャロル・ナハスさんとの接触が禁止された保釈条件に強い不満を示していた。

日本政府の反論の早さとその内容は妥当だ。ただ国際社会へのアピールは足りない。欧米のメディアに対し、英語同時通訳を用意した記者会見をあらためて開くべきだろう。まだその機会はある。日本政府の今後に沙鴎一歩は期待する。

「法秩序を踏みにじる行為」と強く主張しているが…

全国紙でゴーン氏の海外逃亡を最初に社説に書いたのは産経新聞(3日付)と日経新聞(同)だった。それから遅れること4日。1月7日付の朝日新聞が「ゴーン被告逃亡 身柄引き渡しに全力を」との見出しで取り上げている。

朝日社説は「法秩序を踏みにじる行為であり、断じて許されるものではない」と当然のように主張するが、もっと早く取り上げてほしかった。なにか特段の事情があったのだろうか。

そう考えて読み進むと、案の定である。朝日社説はこう指摘する。

「日本では容疑を認めない人を長く拘束する悪弊が続き、国内外の批判を招いていた。それが裁判員制度の導入などを機に見直しが進み、保釈が認められるケースが増えてきている。ゴーン被告の処遇は象徴的な事例の一つであり、運用をさらに良い方向に変えていくステップになるべきものだった。その意味でも衝撃は大きいが、だからといって時計の針を戻すことはあってはならない」