1つはやはり過酷な暑さと過密な日程。プレーする選手にとっても応援する観客やブラスバンドなどにとっても過酷である。19年開催されたラグビーワールドカップは試合と試合の間隔に余裕があったが、甲子園は勝ち上がるほど試合間隔は短くなる。選手は試合数を重ねるごとに疲労が蓄積されるのだからたまったものではない。

午後2~3時は、日本の電力使用量がピークを迎える

もう1つの理由はエネルギー問題だ。夏の甲子園の決勝戦のある日の午後2~3時は、日本の電力使用量がピークを迎える。電力供給量というのはピークに対して余裕を持たせることが大切で、夏の甲子園がなければピークは低く抑えられる。2011年の3.11の後にユーチューブでこの持論を展開したら、高野連(日本高等学校野球連盟)から「午前中に決勝戦をやる」と連絡がきた。確かに11年大会は午前開始となったが、開始時間は年々遅くなっていき、19年は午後2時開始と電力ピークの時間帯に戻っている。

国民的なブレーンストーミング(アイデア出し)のヒントとしては、夏以外に考えられないのかということ。涼しくなる“スポーツの秋”にやるのが一番であるが、学校の長期休暇がないと大会運営は難しいだろう。だが、それなら春には選抜甲子園があるわけで、同じ高校生が春と夏に全国大会をやる必要があるのか。選抜と夏の全国大会の違いもわかりにくい。ならば春を全国大会にして、選抜をやめてもいいのではないか。

甲子園という会場を替えるという議論もある。日本全国に屋根付きのドーム球場があるのだから、これらを活用して、今まで通り夏に行い、決勝戦だけ甲子園で午前中にやってもいい。ラグビーワールドカップも日本全国で分散開催したから盛り上がった部分がある。

国民民主党の玉木雄一郎代表も「夏の甲子園の見直し」を問題提起しているが、やはり議論することが大切だと思う。いかにして伝統を守りながら新しい時代に対応していくか。このバランスというものは国民的な議論で解決していく。高野連や主催企業の都合で勝手に決めるのは時代遅れだ。

(構成=小川 剛 写真=AFLO)
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