地方のベンチャー支援は「スタート地点」になる

フィッシュパスの事例を見ると、「地域の公的機関がベンチャー支援に取り組む意義は本当にあるのか。いっそ東京に行った方が早いのではないか」と疑問に感じる人も少なくないはずだ。

もちろんそれは一理あるのだが、一方で、当センターのような地域の公的機関が、地域密着型のピッチイベントを開催し、ベンチャー支援に取り組んでいるからこそ実現できていることも確実にある。たとえば、フィッシュパスのような、地方ならではの発想をもつベンチャーを発掘し、ノウハウや技術が全国的なビジネスとして展開できる可能性があるという気づきを促せたことは、その一つだろう。

「地元で福井ベンチャーピッチという場があったからこそ、自分のビジネスの可能性を肌で感じることができた。今まで見たことのない世界感を見せてもらえたことで、ビジネスを考える視野が広がった。ピッチ登壇後、ビジネスを加速させる段階では苦しい思いをしたが、今こうやっていろいろな舞台に立たせてもらえているのは、福井ベンチャーピッチというスタートがあったから」と西村社長は振り返る。

県内の人材ネットワーク作りを強化している

当センターでは現在、2017年にマザーズ上場を果たした福井市内の企業、ユニフォームネクストの横井康孝社長を塾長に迎えた経営塾「福井ベンチャー塾」の定期開催をはじめ、ベンチャーに特化した個別相談窓口の設置、ピッチ登壇企業に対しての集中的なメンタリングなどを実施しながら、県内のベンチャー支援人材のネットワーク作りに積極的に取り組んでいる。今後はさらに、各業界に精通した人材を確保しながら、県内ベンチャーのビジネスモデルを加速させる仕組みを強化できないかと模索しているところだ。

地方には、その土地でしか生まれ得ない「地方ならではのビジネスモデル」もあれば、家業を継いで新事業展開を目指す後継ぎベンチャーなど、軸足を地元に置いて全国展開を目指したいとがんばるベンチャーが多数存在する。

当センターのような地域の公的機関がベンチャー支援に取り組む上で、改善していくべき課題はまだまだたくさんあるが、田舎にいても、ビジネスを加速させるために必要な支援の選択肢を幅広に提供していけるよう、今後も挑戦し続けていきたいと考えている。

画像提供=ふくい産業支援センター
ユニフォームネクストの横井社長を塾長に迎えた「福井ベンチャー塾」
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