デリヘル接客中にかかってきた電話は保育園からだった
低価格帯の人妻・熟女デリヘルということもあり、お店の客層は正直あまりよくない。むしろ悪い人の方が多く、「挿れさせろ」「店外で会おうよ」と執拗に言い寄ってくる客もいる。
地方都市の人妻・熟女デリヘルでは、本番行為が常態化しているような店もある。玲美さんは、客からの要求や誘いはきっぱり断っている。
「うちのお店は本番禁止ですが、他の女の子たちに話を聞くと、している子も多いみたいですね。稼ぐためには、自分も本番をしなきゃいけないかな……と思ったこともありました」
S市の郊外にある事務所は、待機部屋と一体になったオープンスペース。待機中は、他の女の子たちとテレビを見ながらしゃべったり、他愛もない会話をしたりといった交流もあった。1~2人ほど仲良くなる人はいたが、お互いの家庭のことまでは話さなかった。お店のスタッフとも仲良くなり、居心地のよい環境ではあった。
しかし、働いている最中も家の義父母が足かせになった。保育園から「お子さんが熱を出したので、迎えに来てください」という連絡があっても、義父母は全く対応してくれないため、玲美さん自身が行かなくてはいけなかった。
ラブホテルでの接客中に、保育園から電話がかかってきたこともある。どうしても玲美さんがすぐに迎えに行かなければならない場合、お客に事情を話してどうにか納得してもらい、プレイを中断してそのままホテルから保育園に向かったこともあった。
「その時は、本当にお客様に申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。友達にも『よく我慢しているよね』と言われます」
何度も離婚を考えたが、「自分さえ我慢すれば」と思う
デリヘルの仕事を始めたことで、かなりの収入は得られるようになった。だが、玲美さんの収入が増えると、夫が勝手に財布からお金を抜いてしまうようになった。
「気がついたら、財布にお金がない。『えっ?』みたいな。支払いのために分けておいたお金がなくなっていることもありました。
でも、そこで夫に文句を言っても口論になるだけなので、もう面倒臭くなって、何も言わないようになった。同居の嫁という立場なので、あまり強く言えない。義父母も昔の考え方の人間なので、話が通じないんです」
離婚は何十回も考えた。でも、子どもたちが夫とニコニコしながら遊んでいる姿を見ると、自分が我慢すればいい、と思ってしまう。
「自分さえ我慢していれば、なんとかなるかな……という考えで今までやってきました。今はもう、子どもしか生きがいがありません。財布からお金を抜くような夫には全く信頼関係を持てませんが、子どもがいるから、家に帰ろうと思えるんです」
S市の実家にいる親は、玲美さんの現状を知っている。「そんな家、早く出て戻ってこい」と言ってくれるが、子どもたちのこともあって、なかなか離婚には踏み切れない。
2年前に母親が50代の若さで亡くなった。「早くこっちに戻ってこい」と親身になって言ってくれたのに、母親の願いに応えることができなかった。