私なら「シングルマザーのシェアハウス」を作ることができる
ここまでシングルマザーの貧困が、深刻なものになっていたとは……。同じシングルマザーとして、何かできないか。シングルマザーであっても、いい人生を送れるお手伝いをしたい。めぐみ不動産コンサルティング社長、竹田恵子さんが子ども食堂のニュースを見た時、強く思ったことだった。
初めて芽生えた、社会貢献をしたいという思い。じゃあ、私は何ができるだろう。仕事は不動産業、そしてこの業界で大きな課題となっているのが空き家問題。私にできることは、この2つを使うことだ。
「シングルマザー同士が一つ屋根の下で、お互いに協力し合いながら暮らして行ったらどうだろう。夜の保育料など無駄なお金をかける必要もなくなるし、少しでも経済的負担を減らしていけば、みんな、自立していけるんじゃないか。そこに私がサポート役として入っていけば、みんなを『よいしょ』と、引き上げることができるかもしれない」
会社員なら無理なことだったが、起業した今なら実現可能な選択肢としてあり得た。しかも、奇跡的な売り上げを得た初年度の決算時こそ、チャンスだ。税金に持っていかれるくらいなら、使ってしまおう――。ここから恵子さんは、シングルマザーのシェアハウス作りに邁進していく。
「そんなことやって、儲かるの?」
恵子さんが“シングルマザーが共同生活で支え合う”という構想を持ったのは、自身の育ちが大きかった。母親が人工透析を行っており、土曜日は家に帰れば誰もいない。でも親同士のコミュニティーがしっかりあったので、近所のおばさん宅に勝手に入ってこたつに入ってテレビを見ていたり、ごはんを食べさせてもらったりと、ご近所のあたたかなつながりの中で育ってきた。今はご近所付き合いがどんどん希薄になっているが、そういうあたたかな環境を自分でつくりたいという思いもあった。
恵子さんが住む神奈川県伊勢原市には当時、シェアハウスはひとつもなかった。
「不動産仲間には起業時に助けてもらったけれど、シェアハウスをやりたいとはどうしても言えなかった。バカにされるし、返ってくる言葉は、『そんなことやって、儲かるの?』に決まっている。偽善者ぶっているって、言われたこともあった」
銀行も同様だった。シェアハウスは劣悪というイメージで、融資が出る時代ではなかった。