物件との出会いで「めぐみハウス」誕生

「いいや、融資が無理なら、現金でやってしまおう」

恵子さんは決意した。そして、一つの物件に巡り合う。ある不動産屋が、幼稚園経営など子どもに関わる仕事をしていたため、恵子さんは思い切って胸の内を打ち明けた。

「私、シングルマザーのシェアハウスをやりたいと思っていて」

すると、打てば響くような答えが返ってきた。

「ちょうど、いい家が空くよ。二世帯で住んでいたんだけれど、親御さんが亡くなって、一人では家賃が払いきれないって、出ていかれる。十分なスペースがある家だよ」

家賃は月に15万円。最悪、半分の部屋に人が入れば採算は取れる。シングルマザーに理解のある不動産屋だったため、話はとんとん進み、この家をサブリースという形で、恵子さんが借りることとなった。これが、2016年4月、起業してわずか2カ月のことだった。

最初に600万円をかけてリフォームを行い、共用部分の家具や家電をそろえた。建物が完成して、入居可能となったのが7月、「めぐみハウス」と名付けた。

めぐみ不動産コンサルティング社長、竹田恵子さん
撮影=プレジデントオンライン編集部

初めてのシングルマザー、働く気はあるのに…

2016年10月ごろからシングル女性が数人入居し、初めてシングルマザーがやってきたのは、翌年の春だった。駅まで迎えに行った時、大きなかばんを持って子どもの手を引く姿に、「これはもう、入る気だな」と思った。入居に必要なヒアリングが済んでいないのに。

「その方は3歳の子どもを連れた、6カ月の妊婦だったんです。すごくいい子だったから、お話をして契約となったのですが……」

妊婦であるのに、離婚を決意したわけだ。夫から必死に逃げてきたのか。子どもとお腹の子を守るための決断だった。まさに「めぐみハウス」が、シェルターとなった。直後、不穏な電話があった。男性の声で、彼女がそこにいるのかの確認だった。恵子さんはとっさに、「知りません」と答えたが、ストーカー紛いの男性も想定しないといけないことを知った。

本人はすぐにでも仕事に就き、自分と子どもの食い扶持を稼ぎ、家賃を払っていきたいという意思があった。しかし……。

「本人にすごく働く気があったのに、妊婦だから働く先が見つからない。しかも、子どもがなかなか保育園に入れない。知り合いとか、伊勢原の企業に当たったけど難しくて、妊婦ということで、生活保護を受給することになりました」

もちろん、妊婦ということで緊急避難的な生活保護取得は当然のことだが、実際、シングルマザーを受け入れてみて、さまざまな「壁」の高さを恵子さんは知ることとなった。