公証人はベッドサイドまで出張してくれる

介護施設へ入所していたり、病院のベッドで寝たきりだったりして、公証役場へ行けないから無理だと考えている方もいることでしょう。

実は、公証人はベッドサイドまで出張してくれるのです。公証役場へ出向く場合と比べ、手数料が1.5倍になりますし、公証人の交通費や日当がかかりますが、ご自分の意思を残したい、子供同士を一生顔も合わせないような関係にさせたくない――そんな思いがある場合は、これくらいは必要経費と考えていいと思います。

あるいは、証人が二人必要という要件がネックになっていて、「遺言内容を家族やお友達に知られたくないから、公正証書遺言は無理」と思い込んでいる方も多いようです。

しかし、立ち会いに必要な証人を、友人や知人に頼む必要はありません。公証役場に依頼すれば、1人につき6000円程度の手数料で証人2人をそろえてくれます。もちろん、先述の公証人同様、ベッドサイドまで出張もしてくれます。これを知っておくと、一気に気持ちのハードルが下がるのではないでしょうか。

特に遺言を書くべき人はこんな人

お子さんがいないご夫婦には、お互いに遺言を書き合っておくことをおすすめしています。「全財産を妻に」「全財産を夫に」という遺言をのこしておくのです。

お子さんのいないご夫婦で、例えば夫が先に亡くなった際、夫の両親が既に死去している場合は、法定相続人は残された妻と夫の兄弟になります。しかし、兄弟にあげるよりは長年連れ添った妻に全財産を残してやりたい、と思う方が多いと思われます。そのためには、遺言を書くことが必要です。兄弟には遺留分がないため、この一言があれば、妻が全財産を相続することができるのです。

内縁の妻や夫、未認知の子供など、相続人ではない人に財産を渡したい場合も、遺言が必要です。何十年連れ添っても、戸籍上の届けが出ていない夫婦は、相続においては相続権がありません。認知していない子供も、戸籍上ご自身の子ではありませんので、相続権がありません。

また、お孫さん、お世話になった人、病院や介護施設などへ財産を渡したい場合も、同様です。とにかく、相続人でない人や団体へは、遺言がなければ一切財産を渡せないので、この点はじゅうぶん心にとどめておいてください。

「会社を経営しており、後継者を長男に決めている」「不動産賃貸をしている」といった方も遺言が必要です。遺言がなければ、相続人同士の話し合いで遺産を分けますが、相続税の申告期限が迫る中、慌てて株式や不動産などの財産基盤を複数の相続人で分散すると、事業継続が困難になるリスクが想定されます。このような事態を防ぐために、じゅうぶんに事前検討を重ねた遺言を書く必要があります。

遺言があればかなえられることはたくさんあります。そして、一澤帆布騒動に学ぶべきことは、「遺言を書くなら公正証書遺言で」に尽きるでしょう。

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