※本稿は、芦原孝充『相続の処方箋』(日刊現代)の一部を再編集したものです。
財産は受け継ぐだけで確実に目減りしていく
「相続が3代続くと財産がなくなる」とは、資産家や富裕層の間ではよく知られた言葉ですが、「何もしなければ、財産は受け継ぐだけで確実に目減りしていく」という意味合いを示します。
こうした目減りの原因は、主に相続税制によるものです。わが国の相続税率の高さは世界でもトップクラスであることから、ある程度の資産をお持ちの方は、相続をする度に財産の約半分が税金として流出することになります。また、その相続に際しては、家族の結婚や独立といった理由による相続分の流出がこれに加わります。
よほどの資産家であったとしても、相続が3代続いた頃には、かつての「家」の格式や体裁など、保てない状態になってしまうことから、そうした言葉が語り継がれているのです。
しかし、財産が失われてしまうのは、何もしなかった場合のことです。しっかり対策すれば、3度の相続を経ても、財産を減らすことはありません。
相続人が一人でも欠ければ、遺産分割はできない
全員主役の相続税、それが戦後の相続税制度です。相続人の誰一人欠けても、遺産分割はできません。遺産分割ができなくなると――10年、20年という時間の経過とともに、相続人が亡くなり、当該遺産分割の主役がネズミ算的に増えていきます。はじめは兄弟3人で話し合えば済むことが、その子どもたちが遺産分割の枠の中に加わります。このゲームは反対者が一人でもいたら、遺産分割できないルールで行われます。
では、ここで実際に相続が発生した場合のことを考えてみましょう。まず、相続発生直後、預貯金が凍結されます。亡くなったその日から、お金がおろせなくなり、振込や引落も一切できなくなります。株式についても同様です。これらは、遺産分割協議(または凍結解除の相続人全員の申し出)が終わらない限り、どうすることもできません。
また、相続人に配偶者がいる場合、最大で税額の50%を(小規模の相続では100%まで)軽減することができますが、これもできなくなります。