※本稿は、芦原孝充『相続の処方箋』(日刊現代)の一部を再編集したものです。
なぜ世界の資本家は都心一等地に注目するのか
筆者は税理士の立場で、地主や企業オーナーの相続に携わってきました。
なかでも、都心一等地を利用した相続税対策を得意とし、これまでに銀座や東京駅周辺のコンサルティング実績があります。
東京駅東側の八重洲から日本橋、銀座へ続く一帯は、再開発が進みニューヨークの摩天楼のような姿になりつつあります。この地域こそ、東京の超一等地であり、今後の成長は黙っていても保証されているのではないでしょうか。
第3章では、筆者の経験をふまえ、なぜ都心の一等地なのか? その答えを読者の皆さんと考えていきたいと思います。
都心一等地は世界の資本家から、資産形成の重要な一部として注目を集め続けています。
たとえば、ニューヨークのマンハッタン島を先住民からわずか24ドルで手に入れたことや、丸の内から神田に続く一帯を三菱が坪当たり20円足らずで取得したといった話は、古くから語り継がれてきました。そしてそれらがどのような変化を遂げたかについては、ここで語るまでもありません。そうした歴史に都心一等地の将来性が裏付けられています。
世界の経済は100年で「710倍」に成長した
ここで読者の皆さんにイメージしてもらいたいと思います。20世紀の百年に、世界の経済がどれだけ成長したかをご存じでしょうか? その速度は約1万7000倍――一方で約24倍のインフレも生じましたが、差し引き710倍ほどの成長を遂げた計算です。
経済成長≒株価の成長――株価は不動産と連動することから、ニューヨークや東京といった世界を牽引する経済の中心地では、自ずと不動産価格が上昇し、その含み益を担保に実体経済への投資を繰り返しました。これらの好循環の果実が、今日的経済繁栄となって私たちはそれを享受してきたのでした。
本章では、都心の一等地の優位性を考える、をテーマに頁を進めていきます。不動産を語るうえで、経済の浮き沈みや、それに直結するマネー・メカニズムを抜きにすることはできません。本章の前半では、最初にマネー・メカニズムを、次に失われた30年の経済衰退期を、そしてこの二つを通じて不動産についてのイメージを深めていきたいと考えています。