資産として見れば「港・中央・千代田・渋谷・新宿」

不動産は、それ自体に大きな付加価値を有するものではありますが、日本では「都心の不動産」は地方のそれと同じには語れない、そんな状況になっています。

海外の人が資産として不動産を見るとき、やはり求めるのは東京、それも港・中央・千代田といったエリア、そして渋谷・新宿のみならずターミナル駅周辺に限定されます。広げても山手線の内側、それも池袋から上野を結ぶ南側。さらに選りすぐりとなると実際には、かなり限られてしまうのではないでしょうか。

「住みたい街ランキング」の上位にランクインするような田園調布や中目黒、あるいは吉祥寺といったところに価値を見出すこともあるかもしれませんが、それは住環境のよさ、生活の利便性といった見方にしか過ぎません。

本書が定義する都心と地方は、グローバルな視点から捉えています。都心とはごく限られたエリアを指し、地方とはそれ以外を指します。たとえば、新宿を起点に中央線を下り、中野を過ぎると徐々に住宅地が広がります。こうした光景は山手線のターミナル駅から続く沿線すべてに共通することですが、これらはどれも地方(都心以外の最上位)という括りで捉えています。

しかし、「いや、そうではないだろう」というお叱りがあるかもしれませんが、ここでは本書の理解のために敢えてそのように区分しています。

「都心」と「地方」の二極化が進んでいる

日本の国土のごく限られたエリアだけに、本書でいう特別な優位性が生じています。衰退する日本の国力を映し出すかのような、円安のトレードオフが不動産の二重構造に作用し、都心と地方とを分断するパワーが働いているからなのです。

芦原孝充『相続の処方箋』(日刊現代)
芦原孝充『相続の処方箋』(日刊現代)

一般には、そのパワーがどれ程のものかについて見えにくいものがありますが、それは徐々に加速度をつけて現れてくると私は見ています。

不動産価格はその性質上、最終的に労働に帰結します。労働力(賃金)を担保に価格形成されていくということです。すなわち、デフレによる賃金の相対的低下は、理論的には本来的な価値と現在の取引価格との乖離に作用しているはずです。それが徐々に時間をかけて顕在化していくのではないかと思います。

日本の賃金水準はG7加盟国でも最低、お隣の韓国よりも下に位置しています。このことが、将来の地方の不動産の行方を物語っているのではないでしょうか。

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