超長期ビジョンのために「1万年時計」を作った

これは経営者に限りませんが、「大胆なビジョン」を立てることには大きな意義があります。なぜなら、大胆なビジョンを考えようとすると、思考のリミットが外れ、ワクワクするような大きな目標を立てることができるからです。また、超長期目標は、「成長×貢献」の目標となり、目標とビジョンやミッションが一致することにもつながります。目標をもつ勇気が、進化する力、未来を創る力にもなります。

孫社長は、超長期目標として「300年成長する企業」を目指しており、そのための「新30年ビジョン」を作りました。これに対して、アマゾンのベゾス氏は、「1万年時計」に投資を行い、1万年時計を実際につくっています。超長期思考で、1万年先まで見据えているのがベゾス氏なのです。

ジョブズ氏は、こうした超長期目標については、残念ながら語りませんでした。非常にビジョナリーな彼のことですから超長期目標をもっていたかもしれませんが、後年においては、病気のせいでもあるのかそれが語られることはありませんでした。ジョブズ氏は、有名なスタンフォード大学の卒業生に向けたスピーチで、「もしも今日が人生最後の日だとしたら、今日やろうとしていることをやりたいと思うだろうか」と毎朝鏡を見て自問してきたと語っています。

こうした考え方が彼にとっては超長期目標に代わるものだったのかもしれません。

No.1にこだわる孫社長、一貫して「顧客」のベゾス氏

ソフトバンクグループ、アマゾン、アップルの創業者である、孫社長、ベゾス氏、ジョブズ氏の3人をさらに比較してみましょう。図表は、孫社長とベゾス氏、ジョブズ氏を6項目で比較したものです。

孫正義vs.ジェフ・ベゾスvs.スティーブ・ジョブスの比較

1項目めの「ミッションの対象」ですが、それぞれ自分のミッションの対象がどこにあるのか。孫社長は「社会的価値」を生み出すことに、ベゾス氏は徹底して「顧客」に、ジョブズ氏は「新たなライフスタイル」を提示することにミッションの対象があります。

2項目めの「こだわり」は、それぞれ何に一番こだわっているのか。孫社長は「No.1になること」に徹底的にこだわっていて、No.1になれない分野では事業を行おうとしません。この点で非常に明快なのは、グーグルの事業領域は絶対やろうとしない点で、たとえば、グーグルがやろうとしている自動運転のOS分野へは参入していません。

ベゾス氏のこだわりは、一貫して「顧客」です。ベゾス氏は長年にわたり、消費者には3つの重要なニーズがあり、それは「低価格」「豊富な品ぞろえ」「迅速な配達」だと言っています。だから、「より低価格」に、「より豊富な品揃え」に、「より迅速な配達」になるようにテクノロジーを駆使してきました。