死の宣告から生還したからあの名スピーチが生まれた

4項目めは「ビジョンの期間」。それぞれのビジョンを達成するまでの期間をどれくらいと考えているか。孫社長は先ほども述べた通り、「300年成長する企業」を目指して「新30年ビジョン」を作成しましたから、「超長期」と言えるでしょう。ベゾス氏は、1万年時計ですからさらに「超長期」。3人のなかでは一番長い期間まで見据えています。

ベゾス氏はブルーオリジンを設立し、宇宙事業を行っています。同様に宇宙事業を行っているテスラの創業者イーロン・マスク氏もそうなのですが、このままでは地球が滅亡してしまうから、その前に火星に人類を送ろうといったことを真剣に考えています。

ジョブズ氏も「長期」ですが、2人と少し違うのは目標を掲げることよりも1日1日を充実させることに重点を置いていた点です。特に、すい臓がんで死の宣告を受け、手術を受けて何とか生還してからは強く死を意識していたと思います。だからこそ、先ほども紹介したスタンフォード大学のスピーチで、「時間は限られているのだから、他人の人生を生きて時間を無駄にしてはいけない」と卒業生に語り、最後に「Stay Hungry,Stay Foolish(ハングリーであり続けろ、愚か者であり続けろ)」と言ったのだと思います。

孫社長と2人との決定的な違いは何か

5項目めは「ビジョンの主な範囲」。ビジョンとして、どこまで見据えているか。孫社長も宇宙事業や衛星の開発などにも投資を行ってはいますが、「主な」というほどではありません。ビジョンの主な事業領域、ドメインは「グローバル」。やはり地球のなかです。日本から始まって、中国、インドから広くアジアに、そしてグローバルに投資を行って事業を展開しています。

ベゾス氏は「宇宙」まで見据えて、ブルーオリジンで宇宙事業まで手掛けており、ビジョンの主な範囲としては、ベゾス氏一人が突き抜けています。ジョブズ氏も「グローバル」ではありましたが、宇宙事業については考えていたかもしれませんが事業展開は行いませんでした。

6項目めは「創造と変革」。自分でものをつくることにこだわるのか、そうではないのか。孫社長は「変革」で、ベゾス氏とジョブズ氏は「創造と変革」。ベゾス氏とジョブズ氏が、自分たちで製品やサービスをつくりあげそれらを変革していくことに強い思い入れがある一方、孫社長は自分でつくることよりも事業を拡大することにこだわりがあり、投資をして投資先の製品やテクノロジー、ビジネスモデルをソフトバンクグループに導入すればいいと考えています。ここが決定的に違うところです。