しかし、これら3つのニーズに対して顧客が満足することはありません。「もう十分に安くなった」「これ以上の品揃えはいらない」「商品の配達は今のままでいい」などとは言わないでしょう。ベゾス氏は、昔も今も10年後も消費者が求めるこれら3つのことは変わらない、と長年言い続けています。

「デザインこそ、ものの仕組みすべてだ」

ジョブズ氏のこだわりは、やはり「デザイン」で、次のように語っています。「デザインはただの見た目やフィーリングじゃない」「デザインこそ、ものの仕組みすべてだ。世界で一番優れたものを作りたい。我々はそういう人たちを雇うのだ」「墓場で一番の金持ちになっているかなんてどうでもいい」(『スティーブ・ジョブズグラフィック伝記』(ケヴィン・リンチ著、林信行監修、明浦綾子訳/実業之日本社)ジョブズ氏にとってのデザインは、私たちが考えているデザインの概念よりも、相当に広く深い意味があることがわかります。

仕組みにおいても、プラットフォームやエコシステムにおいてもデザインを強く意識してこだわりました。もちろん、最終的には製品のデザインがシンプルでミニマルであることにも強くこだわったことは言うまでもありません。ジョブズ氏がアイポッド(iPod)担当のデザイナーらにデバイス上のボタンを減らすよう指示を与えたのは有名で、これが製品の代名詞となる「スクロールホイール」の実現につながりました。

「大ボラ」を吹く孫社長、徹底した秘密主義のジョブス氏

3項目めは「ディスクロージャー度」。自分のこと、自社のことをどこまで開示して話すのか。これは三者三様で違いが明らかです。孫社長は、「大ボラ」を吹いて、自分や自社の目標、野望を公言して、有言実行してきました。ですから、ディスクロージャーについては極めて「積極的」。目標や野望を定性的かつ定量的に、数値まで開示しています。これは孫社長ならではで、非常に特徴的です。

ベゾス氏、あるいはアマゾンは、ディスクロージャーには相対的に「消極的」です。最低限のことは明らかにし情報公開を行いますが、必要以上に話すことはありません。ジョブズ氏はディスクロージャーにおいてはそれ以上に消極的で、「秘密主義」で有名でした。「秘密主義はパワーだ」とすら語っており、アップルでは秘密主義が宗教のように信仰されていました。

社内において部門同士はそれぞれ孤立環境に区分けされていましたし、互いのプロジェクトに干渉しないのが基本ルールでした。世界中のメディアに対しても、新製品の情報を封印しておくことで関心を集め、マーケティング戦略として発表会への期待を高める効果などがありました。