阪神・淡路大震災の際、臨時で出された通達
そうはいっても、所得税法は、その時代に合うように、少しずつ改正されたり、通達で補ったりしている。
少し古い話で恐縮だが、阪神・淡路大震災の際、国税当局は【阪神・淡路大震災に関する諸費用等の所得税の取扱いについて】という通達を出した。通常、控除は損害を受けた年の所得において適用されるが、この特例によって、大震災の前年である平成6年分の所得で適用できるようになったのだ。被災者は通常より一年早く還付金を受け取れることになり、復興の促進に貢献した。
なお、この通達による取扱いについては、個々の納税者の実情に応じ、懇切かつ具体的に指導するよう万全を期することとされたい。」
と書かれた文章は今も国税庁のHPで確認することができる。
当時、国税局の職員は、被災された方の感情を逆なでしないよう、毎日、スーツではなく、ジャンパー姿で被災地に通った。寒空の中、被災に遭った人たちと面談し、災害に関する費用を算出したのだ。このときの臨機応変な国税当局の対応に筆者は感服したのを覚えている。
「世の中、そんなにうまい話はない。ただより高いものはない。人を見たら泥棒と思え!」
こんなふうに言ってしまうと身も蓋もないが、甘い言葉に惑わされないように用心する必要はある。
「あれ? これはヤバいかも……」
少しでも、「なんか違うな、これはちょっとおかしいかも……」と感じることができる、そういうセンサーを備えておくことが大切だ。起業する、しないにかかわらず、うまい話には裏があるとまずは疑ってかかることが、自分の身を守ることになる。
きれいな標準語を話す大阪の市役所職員の正体
詐欺と聞いて、一番に思い出すのは、お年寄りを狙ったものだ。自宅に訪問するもの、電話によるもの、手口はさまざまだ。筆者は大阪在住。駅前のATMには、「ATMで還付金が受け取れることはありません」と色あせた紙が貼ってある。
数年前、筆者の自宅に市役所の職員と名乗る男性から電話がかかってきた。
【男】もしもし、市役所のものですが、還付金のことでお電話しました
なんともきれいな標準語だった。
【筆者】市役所の方なんですね。何課の方ですか?
【男】えっ、何課って……。」
男はすぐさま電話を切った。
悲しいかな、筆者の自宅の電話はナンバーディスプレイ機能がついていない。電話番号がわかれば警察に通報できたのにと、後悔している。
実家で老夫婦二人で住んでいるような場合、電話機も年季が入っているかもしれない。ボーナスで何か両親にプレゼントを考えているという方は、ナンバーディスプレイ機能がついている電話機を贈るというのも、詐欺被害を最小限にとどめることにつながるのではないだろうか。