年末にかけて振り込め詐欺が増えるという。元国税調査官で税理士・産業カウンセラーの飯田真弓氏は、「盗難や災害で被害を被ったときは申請すれば税金が安くなるが、詐欺被害にはそのような救済措置はない」という——。
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カフェで熱心に語りかける人と話に引き込まれていく人

クリスマスにお正月。年末年始は一年で一番お金が動く時期だ。街行く人の足取りも少し浮足たってくる。そこで、気を付けないといけないのが詐欺だ。

筆者は、調査官時代の癖が抜けきらず、いまだに、喫茶店やカフェに入ると聴き耳を立ててしまう。二人掛けのテーブルで、友達でもなく、上司と部下でもなく、一方が、必死に話をしている。

実際の勧誘をしている人の言葉をリアルに再現することはできないが、話している方の人はノリノリだ。聞いている方の人は、最初は引き気味だけど、どんどん話に引き込まれていく。カフェで、このような場面に出くわしたことがある方は、少なくないと思う。

「でね、実は、もっと、志高い人が集まっているセミナーがあるんですよ。参加費は無料なんで、一緒に参加してみませんか?」

最初は、無料の行政などが主催するセミナー、次に、個別でカフェで話をし、脈ありと見込んだら、その次は、自分たちのセミナーへの参加を促すという作戦だ。

彼らは、ネットワークビジネスという言葉を極力使わない。「いいものを広めて、みんなを幸せにしたい」……扱う商品が違っても、キーワードは“幸せ”だ。

ある人は気が付くと自宅に浄水器が1000万円分、ある人は、ありとあらゆる日用品が山積みに、ある人は、毎日飲み続けると健康になるというジュースが300万円分。売りさばくことができず、自宅に在庫がたまってきたころ、だまされたのかもと思い始めるのだ。